震災語り継ぐランドセル/家族の話が本に

◇さいたま米津さん/弟が背負う兄の形見

 阪神大震災で犠牲になった兄のランドセルを、震災後に生まれた弟が背負って学校に通っている。震災から間もなく15年。小学1年生だった兄を超え、弟は2年生になり、ランドセルにまつわる物語は「にいちゃんのランドセル」として17日、出版された。兄弟の父は「震災を知らない子たちにも、思いを共有する力を育んで欲しい」と願う。

 1995年1月17日未明、阪神・淡路地域を最大震度7の地震が襲った。百貨店社員米津勝之(かつし)さん(49)一家が住んでいた兵庫県芦屋市の木造アパートは全壊。小学1年の長男漢之(くにゆき)君(当時7)と幼稚園の長女深理(みり)ちゃん(同5)がタンスの下敷きになり亡くなった。「深理は何もなければ12日が20歳の誕生日。腹立たしい」と勝之さんは言う。

 2年後、次女英(はんな)さん(12)が誕生。2002年には次男凛(りん)君(7)が生まれた。

 07年12月、芦屋市の自宅の風呂場で、勝之さんは凛君に聞いた。小学校入学を翌春に控えていた。

 「ランドセル、どうする?」

 「くにゆきのを背負うよ」

 何でも、兄のお下がりを愛用していた凛君は、すぐにそう答えたという。両親が大切にしまってきたランドセル。歳月が過ぎ、革が傷んでいた。でも、「なんでぼろいの」と尋ねる友達に凛君は言った。「ぼろくてもいいねん」

 ランドセルの物語は1月、朝日新聞などで報じられ、凛君は「ハッピーニュース2008」(日本新聞協会主催)の「ハッピーニュースパーソン」に。それを機に講談社が出版を企画。「何より子どもたちに読んで欲しい」(同社児童局)と、読みやすいように「です、ます」調にし、漢字にはルビを付けた。

 一家はいま、勝之さんの転勤で福井市を経て、この夏からさいたま市大宮区で暮らす。凛君は2年生になった。

 最近、字がきれいだった兄・漢之君を意識してか、習字を頑張っているという凛君。将来の夢は「建築家とオーケストラ」だ。「地震でも倒れないうちをつくりたい。コントラバスがかっこいいから」

 追悼式などで経験を伝え続けている勝之さん。ここ数年、防災の話のウエートが増しているように思う。震災で人が亡くなり、悲しむ家族がいることが風化しているのではないかと心配する。被災地から遠く離れた埼玉に来て、温度差を感じる時もあるという。「そんな壁を越えて互いに分かり合おうとする力に、この本がなれれば」

 「にいちゃんのランドセル」(城島充著)は、190ページ、税別定価1200円。

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