GW ゆったり 島時間<1> ボラ跳ねウグイス鳴く

尾道市・因島の土生(はぶ)港から、愛媛県上島(かみじま)町・弓削(ゆげ)島(じま)行きのフェリーに乗った。約15分で弓削港に着く。

 町役場の並びに、シックなたたずまいのカフェを見つけた。「しまでCafe´」。早速、「地魚スパゲティ」を注文した。地元でとれたタイの上に、近くの生名(いきな)島(じま)(愛媛県上島町)のエビの頭から作ったというソース。弓削のりは、スープにも入っていた。

 運営しているのは、上島諸島の住民約60人が共同出資し、2008年10月に設立した「しまの会社」で、特産物の商品開発と通信販売も手がける。社長の兼頭一司(かねとうかずし)さん(38)は「高齢化、産業の衰退、人口減と、この町は疲弊した日本の地域の代表格。だからこそ、島民自身で発信しないと。大変ですけど」。

 町営の海水温浴施設「潮湯(しおのゆ)」に向かった。湯につかるのを楽しみにしていたが、「着用」すべき水着を持参しておらず、断念した。見ると、海に臨むヒノキの露天風呂に、女性の影が二つ。声を掛けて許しを得たうえで、話を聞かせてもらった。

 「ここに来ると、ラジオみたいに誰かとしゃべりっぱなし。楽しいよ」と、利用し始めて5年近くになる尾道市因島重井町の大福つゆ子さん(78)が言えば、2年足らずの同市瀬戸田町御寺、農業植松英子さん(74)は「座骨神経痛が良くなって、夜も熟睡できる」と、効用をひとしきり語った。

 「弓削島一周道路」と表示された県道を車で進む。島には信号がなく、気がつくと山道をくねくね上っていた。急に視界が開け、燧灘(ひうちなだ)が車窓いっぱいに広がった。路肩に車を止める。斜面の茂みから時折、ウグイスのさえずりが二重唱、三重唱となって響いてきた。

 環境省選定「快水浴場百選」の一つ、松原海水浴場の砂浜では、ヨットが沖に出るところだった。国立弓削商船高専の帆走部員たちだ。「乗りますか」。部顧問の同校教員二村彰さん(36)が、伴走する艇に同乗させてくれた。ボラが跳ねる海面をゆったりと走る。

 1年の竹本怜央さん(15)は、この日入部したばかり。香港で暮らす両親の元を離れて寮生活を送っているという。「この海と山。学校見学に来たとき、環境がすっかり気に入って」。半日巡った島を、穏やかな浜都湾の波上から眺めていると、彼の選択と決断が理解できる気がした。(布施勇如)

      ◇

 しまなみ海道の料金問題で注目を集めるフェリー航路。離島と本土をつなぐ貴重な生活航路だが、観光にも最適だ。島ならではの風景や地元の素材を生かした食べ物、島民との触れ合いなど、新鮮な感動と出会える小さな旅。ゴールデンウイークは日常の慌ただしさを忘れ、ゆったり流れる<島時間>に身を委ねてみてはどうだろう。記者がフェリーに乗り、県東部から日帰り可能な島を紹介する。

 <メモ>

 弓削島 人口2781人(3月末現在)、周囲約18キロ。特産品は弓削のり、弓削みそ、ハッサクで作ったマーマレードなど。

 イベント 5月2日午前10時、弓削漁協(0897・77・2121)前広場で「お魚朝市」。5日同8時30分、東泉寺(0897・77・2579)で「薬師祭」。

 <問い合わせ先>

 せとうち交流館(0897・77・2252)、しまの会社(0897・77・2232)、潮湯(0897・74・0808)。

(2010年4月30日 読売新聞)

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