LMD:生活そのものを防災に 徳島大・黒崎助教が新しい考え方 /徳島

10月30日16時0分配信 毎日新聞

 ◇日常の行動こそ備え--京都大と連携へ
 徳島大学環境防災研究センターの黒崎ひろみ助教(32)が、防災に対する新しい考え方「ライブ・マネジメント・デザイン(LMD)」を考案した。お金をかけず▽現実的に▽今の生活そのものを防災にする――ことで、「防災=生活」という意識付けを促す考え方。黒崎助教は「防災は特殊なものではない。『当たり前のように日常やっていることこそが防災に役立つ』と気づく大切さを訴えていきたい」と話している。【深尾昭寛】
 24日に京都大で開かれた第3回防災計画研究発表会で発表した。
 LMDは基本的に、災害発生時に企業が事業を継続するため練る対応策「事業継続計画(BCP)」を個人に応用していく考え。生きるために最も必要な「衣、食、住、金」▽それに次ぐ重要な物▽その他の大切なもの――と同心円の図を作成。被災時に何が必要か、具体的にイメージ化し、それらを災害時に維持するための参考材料にしていく。
 黒崎助教は、特に大切な点として、図上の「金」と「衣食住」へのリンクを切ることを主張する。現在の防災活動は「啓発活動が盛んなのに、災害への備えが浸透しない」というジレンマを抱えていると指摘。理由として、被災までは備蓄されるだけの防災グッズや非常食・水が、金銭的にも物量的にも家庭が負担するには大きすぎる点を挙げる。「だからこそ、日常生活での行動が、防災に役立つと気づいてもらうことが大切」と言う。
 具体的には、「防災時の非常食の備蓄」として乾パンの購入・貯蔵だけでなく、普段から食べる缶詰、干物、脱脂粉乳などを、常に一定量ストックしながら食卓に回していく▽風呂の湯を抜かず、災害発生時の非飲料水に活用する▽常に身分証明や通帳・印鑑・保険証を身近に置いておく――などを例示。とりたてて手間もなく日常生活で意識付けさえしておけば、生活そのものが十分に防災への備えになることを示した。
 黒崎助教は同センターで、防災教育の実施や被災地での情報収集といった活動にあたる。県内を中心に24の教育機関で防災教育を実施したり、被災者と話し合う中で「防災は特殊」という考え方がその継続を阻害している現状に気づいたという。
 学会でも評判は上々。「防災は生活である」という言い方に大きな反響があったという。今後は京大と連携し、これまでの防災教育やイベントなどをどう改め、いかに住民に近づけるか研究を進めていくとしている。

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