独身息子の母介護(4)仲間と共に「幸せ」かみしめ

3月16日12時53分配信 産経新聞

 不器用な独身息子らが、母の在宅介護を楽しんで続けるには、同じ介護経験を持つ仲間との交流が欠かせません。全国には、介護で悩んだときに相談できる家族会が多数あり、最近は独身息子らの参加も目立っています。(清水麻子)

 午前11時。母(77)を載せたデイサービス車を見送り、家事を済ませ、ゆっくり朝風呂につかる。「幸せだなあ」。東京都国分寺市の伊藤隆之さん(48)は、しみじみ思う。

 母は要介護5。5年前、認知症と診断された。当時、伊藤さんは43歳。将来独立する夢があり、飲食店で働いていたが、介護役を担うのは自分しかおらず、辞めて介護に専念するようになった。

 収入は母の遺族年金のみだが、伊藤さんは「優しかった母に恩返しができる生活は、とても人間的」と前向きだ。残り物を工夫しておいしい食事を作り、母の便秘解消法を工夫するのも創造的で、また楽しい。

 しかし、かつてはこんな前向きな気持ちではいられなかった。母が認知症と診断される前は、「保険を解約された」と騒ぐ母に腹が立ち、ひどい言葉を投げかけたことも。認知症と判明してからも、この先どうなるか予測がつかず、不安だった。

 そんなとき市報で、認知症の人の家族会「きさらぎ会」(国分寺市)の存在を知り、何気なく参加したことが、伊藤さんの人生を変えた。

 テーブルを囲んでいたのは、母と変わらない年齢の女性たち。壮絶な介護を続けてきた人もいた。それでも人生に向き合い、幸せだと語る経験者を前に、夢中で母のことを話した。経験者らに「お母さんに幸せだと思ってもらうには、息子さんがまず元気でないと」と、言葉をかけられ、はっとした。

 「まだ起きてないことに、不安を感じなくてもいい。何か問題が起きたら、会の仲間に相談できる」。肩の力を抜いて母に接したら、母にも笑顔が増えた。

 伊藤さんはいう。「月に1回しかない会合ですが、非常に大きな存在になりました」

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 ■悩みを語って介護の質も向上

 「きさらぎ会」の西原恵子世話人によると、5年ほど前から、参加者に独身息子らが目立ち始めた。現在は伊藤さんを含め6人。「みなさん、回を追うごとに前向きになっています」

 男性介護者の実情に詳しい立命館大学の津止(つどめ)正敏教授は「介護仲間がいる人と、いない人との気持ちの持ちようは、まったく違う」と話す。「在宅介護をしていると、心が揺れることが多いが、悩みを話せる介護仲間がいれば、気持ちが整理できて質の高い介護につながる。逆に他者との関係性が絶たれると、気持ちの持って行き場がなくなり、共倒れになる」(津止教授)

 家族会が果たす役割は大きいが、独身息子らには敷居が高い。なかには、半年前の市報を握りしめて参加した人も。東京都江東区の在宅介護家族の心のネットワーク「絆きずな」にも、介護する息子はいない。小野有香里代表は「なかなか情報を届けられず、もどかしい」と打ち明ける。

 男性が気軽に参加できる家族会が少ないことから、津止教授らは今月8日、「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」((電)075・811・8195)を立ちあげた。男性介護者を支援する、オヤジの会(東京都荒川区)▽シルバーバックの会(長野県上田市)▽スマイルウェイ(兵庫県宝塚市)などが参加。今後、都道府県に1カ所程度に家族会を増やしたい意向だ。

 津止教授は「ケアマネに連れてこられ、煮詰まった感じが解消されつつある人もいる。専門職は、彼らをどんどん会に誘ってほしい。同時に、男性には経済的な問題も大きいので、介護と仕事の両立支援策も考えていきたい」と話している。

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 身近な家族会を知るには、東芝けあコミュニティ(http://care.toshiba.co.jp/care/index_j.htm)の在宅介護家族会全国ガイドが参考になる。また、各地の社会福祉協議会も詳しい。=おわり

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