『銭湯は寺子屋』マナー学んだり しかられたり 生き残りかける 足立区

日本の伝統文化である銭湯が次々と姿を消す中、子育ての場として銭湯を見直す動きが足立区で広がっている。区内の五十三の銭湯が連携し、小学生向けの割引キャンペーンを実施。「銭湯は寺子屋」を合言葉に、生き残りを図る。 (岡村淳司)

 風呂付き住居が一般化してから、銭湯は利用者が激減。今も都内では下町を中心に点在するが、施設が老朽化し、改修費用を工面できず廃業するケースが目立つ。都公衆浴場業生活衛生同業組合の組合員は一九六八年に約二千七百軒だったが、現在は約八百五十軒。「経営者が高齢化し後継ぎもいない。減少に歯止めがかからない」と同組合は嘆く。

 こうした現状を打破しようと、同組合足立支部は二〇〇五年から銭湯を“教育施設”とアピールする活動を開始。区から家庭教育分野の補助金を年間約三百万円受けて、啓発チラシ作成や入浴料の割引などに充てている。

 他人を気遣う心やマナーを身に付けたり、他人にしかられたりする。こうしたことが銭湯の教育的効果だと同支部は強調、世間を学ばせる場として活用してもらいたい考えだ。

 今年七月から来年二月までの土、日曜は、入浴料を小学生は百円(通常百八十円)、同伴の大人を三百三十円(同四百五十円)にするキャンペーンも実施。割引時に必要なシールを作り、計三万二千人が通う区内の全公立小学校に配布。懸賞クイズも併せて企画し、盛り上げを図る。

 親の世代に銭湯に入った経験がないため、子どもにも銭湯離れが連鎖しているという。同支部役員で西新井で銭湯を営む田中紀代和さん(63)は「高齢者向けのアイデアは出尽くした感がある。子どもを新たな客層として掘り起こし、銭湯文化を残したい」と期待。区子育て支援課の担当者は「銭湯には子どものモラルを養う効果がある。今後も協力したい」と話している。

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