祖母が住んだ古民家をギャラリーに/洲本

神戸市垂水区出身の陶芸家、西村昌晃(まさ・あき)さん(31)が、祖母が長く住んでいた洲本市五色町鳥飼浦の古民家を改装し、今月からギャラリーとカフェをオープンさせた。かまどの煙で黒光りした梁(はり)や柱をそのまま生かしながら、部屋の一部はしっくいを塗って明るい空間に改造した。昔と今のコントラストが際だつ、斬新な建物に生まれ変わった。(藤本久格)

 丹波立杭(たち・くい)焼の窯元で修業した西村さんが、五色町の集落にある祖母の家の納屋と牛小屋を改装し、工房「樂久登(ら・く・と)窯」を開いたのは5年前。「窯をつくるなら、小学生の夏休みを過ごしたおばあちゃんの家と決めていました」

 西村さんがつくる焼き物は、茶わんや料理皿など素朴な作品が多い。古民家のもつ懐かしさと相まって、島外から多くの人たちが工房を訪れるようになった。

 「お茶を飲みながら、田舎の雰囲気と陶芸作品をゆっくりと楽しめる空間をつくりたい」。そう思うようになった西村さんは昨年春、古民家鑑定士で淡路市に設計事務所をもつ平松克啓さん(30)に家の改築を依頼。平松さんが声を掛け、島内の大工や左官業者たちが作業に携わった。

 改築した木造平屋建ての古民家は建坪148平方メートル。築100年の母屋と、70年ほど前に建て増した棟続きの離れ、風呂場や便所などの水回りを備えた築50年の建物からなる。

 台所と居間はテーブルやカウンター計17席を備えたカフェに改造。カフェスペースから上る屋根裏部屋は、土壁を塗り替えてギャラリーに。竹と木の皮で編んだ素材の上に土を敷いて断熱効果を高めた、昔ながらの「土天井(ど・てん・じょう)」もそのまま使った。カフェスペースと和風のギャラリーの間には、白いしっくい壁で洋風の展示スペースをこしらえた。和風建築のなかで際だつアクセントになっている。

 この春に小学校の教諭を定年退職した母親の正子さん(60)と姉の美帆子さん(33)が神戸から移り住み、ギャラリーを手伝う。正子さんは「最初は陶芸の道に進むのに反対だったが、息子がつくる優しい作品を通じて、たくさんの人と知り合いになれるのがうれしい」。昌晃さんは「祖母は3年前に亡くなったけど、多くの人が訪れる今の家を見たらきっと喜んでくれると思う」と話す。

 ギャラリーとカフェは午前10時~午後5時(火曜休み)。予約でランチもある。問い合わせは樂久登窯(0799・34・1137)へ。

「大きな病院だと虐待疑われる」1歳に熱湯の母、個人病院を受診

堺市南区の自宅で1歳の長女にシャワーで熱湯をかけ、大やけどを負わせたとして、傷害容疑で逮捕された母親の無職井上夢麻(ゆま)容疑者(23)が「大きな病院だと虐待を疑われると思い、事件直後は個人病院を受診した」などと供述していることがわかった。3か所回った個人病院ではいずれも「症状が重く、手に負えない」と言われ、4か所目に受診した総合病院が通報した。大阪地検堺支部は1日、井上容疑者を傷害罪で起訴した。

 起訴状によると、井上容疑者は4月9日夜、自宅風呂場で、長女の尻や背中などにシャワーで熱湯をかけ、やけどを負わせた、とされる。井上容疑者は「お尻の汚れを洗う時に泣いたので、カッとして、シャワーのノブを最高温度に回して熱湯をかけた」と供述。給湯システムの性能から湯は60度以上あったとみられ、長女は重傷で約1か月間、入院した。

 捜査関係者の話では、同居の母親(42)が4月10日朝、やけどに気付き、井上容疑者は個人病院3か所に長女を連れて行った。どこも「大きな病院に」と勧め、同13日に個人医院の紹介状で府南部の総合病院を受診、虐待が発覚した。井上容疑者は「手がかかり、産後からかわいいと思えなかった」とも供述しているという。

(2010年6月2日 読売新聞)