自給自足生活の実践で知られている朝来市和田山町朝日の「あ~す農場」を、関西大学と京都教育大学の学生たちが17日まで2泊3日の合宿に訪れている。環境や食料問題などを学ぶため、大学生協が毎年実施している研修の一環として企画。約15人の学生が日ごろの便利な生活を離れ、自然の恵みに寄り添う山の暮らしを体験している。
農場は23年前、西宮市から移り住んだ大森昌也さん(68)が開いた。田畑を耕し、鶏や豚などを飼って食糧を自給。豚のふんなどを発酵させたメタンガスを調理に使い、家の前を流れる川を利用した水力発電で電力の半分ほどを自給。炭焼きや天然酵母のパン作りで得た現金収入で、ガソリン代などをまかなう。
学生たちは15日午後の到着直後から、大森さんの長女ちえさん(24)、次女れいさん(20)、三女あいさん(20)の手ほどきを受けながら、肥料やメタンガスの元になる鶏や豚のふんを運んだり、鶏の卵を集めたり、まきを割って風呂を沸かしたりと、絶え間なく続く作業に追われた。
16日には、鶏さばきに挑戦。れいさんとあいさんが手本に包丁で鶏の首を切り落とすのを、学生たちは言葉も出ない様子で静かに見つめていた。学生2人も2羽の首を切って計3羽をしめた後、みんなで羽根をむしり、包丁でささみやモモなどにさばいた肉は、夕食のカレーの具になった。関西大3回生の横村佳奈さん(21)=大阪府吹田市=は「鶏の首が切られた瞬間、頭が真っ白になった。私たちのために死んでくれたのでふだん以上に味わって食べてあげたい」と話していた。
食育に関心があって参加した同大学2回生の西内志帆さん(19)=伊丹市=は「食品ができるまでどんな過程があったか、ふだんはわからない。ここではその過程が省かれることなく、いろいろ勉強できる」と話していたが、鶏の解体を体験した後、「ここまで知る必要があるのかどうかわからない」と少し考え込んだ様子。「でも、時間がかかって大変なことはよくわかりました」と語った。
大森さんは「こういう自給自足の暮らしがあることを知ってもらい、将来過疎の山で自活する若い人たちが増えるのが一番の望みです」と話していた。