∞ 小野川温泉で導入「スパ・ヒーポン」
老舗(しにせ)の温泉宿が、温暖化対策に乗り出した。創業100周年を迎えた米沢市小野川温泉の「鈴の宿 登府屋(とう・ふ・や)旅館」(遠藤章作社長)は今月、灯油を使うボイラーを撤去し、温泉の排湯を熱源に有効利用して冷暖房と給湯を行う新設備「スパ・ヒーポン」を導入した。年間約60トンの二酸化炭素(CO2)削減につながるという。(内藤文晴)
∞ 排湯を熱源に
スパ・ヒーポンは北海道や中部地方で約30カ所の実例があるが、東北では初めて。
仕組みは、風呂からあふれる温水を排湯槽に集め、「ヒートポンプ」と呼ばれる技術で熱エネルギーを回収。その熱で湯や冷水を作り、冷暖房や給湯に使う。排湯の温度は40度前後だが、水を65度まで加熱できるという。
ボイラーで年間29トン消費していた灯油を使わなくなり、年間58トンのCO2を削減できる計算だという。電気代が年間54万円かかるが、ボイラーの音で使えなかった部屋が使えるようになり、費用は4・4年で回収できる見込み。エコ担当の遠藤直人さんは「深夜料金の電気を使い経済的。ボイラーと違って原油高騰の影響を受けない」と話す。
登府屋旅館は、経済産業省が進める「国内クレジット制度」に事業計画を申請し、認証を目指している。CO2削減分を他企業と取引できる制度だ。