10月24日2時30分配信 毎日新聞
欠陥製品としてリコールを実施しながら、回収や改修をされなかったため火災などの重大事故を起こした事例が、法律に基づく事故報告制度の始まった昨年5月から今年9月までに33製品、183件に上ることが分かった。最も事故の多かった電気コンロでは各社の平均改修率は75%にとどまっていた。リコール情報を利用者に伝えないケースがある上、利用者の申し出がないと回収・改修できないシステムに問題があると専門家は指摘している。【奥山智己】
消費生活用製品安全法の06年改正に基づき、家電など身近な製品の事故報告制度が始まった。
経済産業省によると、最も事故件数が多かったリコール対象製品は、松下電器産業(現パナソニック)や富士工業などが製造した電気コンロの57件。次いで▽長州産業製などの石油給湯器29件▽長府製作所製などの石油給湯器付き風呂釜19件▽千石製などの電子レンジ11件。全事故のうち173件は火災だった。
製造・輸入業者別では、温水機器メーカー「ノーリツ」が34件で最多。松下電器産業が29件、富士工業16件と続く。各製造・輸入業者は新聞広告やウェブサイトなどでリコールを知らせている。
だが、今年4月に東京都内のマンションで06年2月にリコールされていた米ホワイトウェスティングハウス社製のガス衣類乾燥機から出火した火災では、輸入会社「ツナシマ商事」と販売業者が、このマンションでの利用を知りながら、未改修のまま放置していた上、利用者にも伝えていなかった。ツナシマ商事は「販売業者に『こちらで対応するので利用者に接触しないで』と言われたので任せていた」と釈明する。
また、電気コンロについてはメーカー13社が昨年6月に協議会を設立してチラシなどで周知し改修を進めていたが、賃貸マンションに備え付けの場合にはオーナーや不動産業者が協力しないケースがあり、改修率の平均は75%(9月末現在)にとどまっている。
製品事故に詳しい中村雅人弁護士は「リコールは法律でメーカーや輸入事業者の自主性に任されている一方、利用者の申し出がないと回収・改修できない仕組みで、メーカーが『待ちの姿勢』になってしまうことが問題」と指摘。「国は、メーカーなどに販売店の協力を得て製品が誰に渡ったのか把握させ、リコール時の回収・改修を確実に実施させるべきだ」と話している。
【ことば】リコール
家電など身近な製品については消費生活用製品安全法で規定。製品事故が起きた場合、メーカーや輸入事業者に対し回収などの措置を求め、販売店に対しても回収などの協力を求めている。いずれも努力規定で義務はない。生命に重大な危害が及ぶ場合などに限り、担当相はメーカーなどに対し、回収など危害防止命令を出すことができる。