■岡山でハンセン病市民学会
ハンセン病への国の対応や課題を考える「ハンセン病市民学会」の第6回総会・交流集会が8日、岡山市内のホテルで開かれた。約千人が参加し、「島は語る」をテーマに、療養所の入所者が島での生活や、偏見と闘ってきた歴史について語った。(保田達哉)
■偏見との闘い 語る
市民学会は2005年に設立。ハンセン病問題を風化させないため、毎年、各地の療養所などで総会・交流集会を開いてきた。今年は初めて岡山が会場となった。
対談には入所者2人が登壇した。瀬戸内市邑久町の国立療養所「長島愛生園」で1936年から暮らす加賀田一(はじめ)さん(92)は、入所者が施設側に待遇の改善を求めて、ストライキやデモを決行した「長島事件」を説明。「園長との協議の場にいくと、ヤジや怒号が飛び交っていた」と当時の様子を語った。事件は和解し、入所者でつくる自助会ができたという。
国の隔離政策を批判し、「官僚は先輩のつくった法律だからと、誰も問題を指摘しなかった。相手が先生であろうが先輩であろうが、間違っていると言える人になってほしい」と語気を強めた。
1952年に長島愛生園に入所した金泰九(キム・テ・グ)さん(83)は、入所者の1割が在日朝鮮人だったことに驚いたという。「入所時に消毒液の入った風呂に入れられ、所持金も奪われた」と振り返った。いまだに偏見が残っているとし、「ハンセン病を正しく理解してほしい」と訴えた。
全国ハンセン病療養所入所者協議会の神(こう)美知宏事務局長(76)によると、全国13療養所にいる入所者約2400人の平均年齢が81歳で、年に約150人が亡くなっているという。神事務局長は療養所の将来構想について、「入所者が1人もいなくなっても、国の負の遺産として、博物館や資料館として残すよう求めていく」と話した。
9日は長島愛生園と近くにある邑久光明園、高松市の大島青松園に分かれて分科会があるほか、岡山の2療養所では園内を見学できる。