学校やPTAの連絡から井戸端会議的な内容まで、親同士のコミュニケーションに欠かせない携帯メール。便利だが、人間関係のトラブルのもとにもなっている。失敗しないコツを、達人に聞いた。(井上圭子)
「娘の友達の母親から『今度の担任、ハズレだよね』とメールが来たので、軽い気持ちで『あの先生○○らしいよ』とうわさ話を確認せずに返信したら、それが私の情報として勝手に大勢の保護者に転送されちゃって」
小学生の子どもを持つ東京都内の母親(39)が反省を込めて言う。話に尾ひれがつき、子どもたちにも伝わってクラスは新学期早々、学級崩壊の危機に。結局、うわさは事実ではなく、担任との関係はギクシャクしたままだという。
「うわさや悪口、愚痴、私的な相談、意見など、第三者に見られて困る内容は絶対に送らない方が良い」と、「気持ちが伝わる ケータイメール術」(日本放送出版協会)の著者でコミュニケーション・インストラクターの杉山美奈子さんはアドバイスする。
携帯メールは簡単に複数の人に転送できるので、文面が“証拠”として残りやすい。悪口に限らず、携帯メールの文章は短めになりがちで、安易に書かれやすいことから、微妙なニュアンスまで正確に伝わるとは限らない。読み手が不快に思っても、送り手は感じ取ることができず、釈明や謝罪も難しい。
「『メール好感度』を格段に上げる技術」(新潮新書)の著者でライターの神舘(こうだて)和典さんは「事務連絡か、『ありがとう』。携帯メールの用途はこれだけにすると失敗がない。感情はタブー」と話す。
携帯メールとはいえ、受け手がリアルタイムで読むとは限らない。「『子どもが熱を出したので今日のバーベキューは行けません』など、急ぐ内容は電話が確実」と杉山さん。
パソコンメールと違い、データ量に応じて受信者側にもパケット代が課金されるのも携帯メールの特徴だ。添付写真や動く絵文字を盛り込んだ文面を良かれと送っても、受け手の料金プラン次第では迷惑をかける。「相手の料金体系がわからないなら、添付写真や装飾の多いデコメールをむやみに使わないこと」(杉山さん)
絵文字や顔文字も場合によってはニュアンスを伝えるのに役立ちそうだが、使い方を間違うと逆効果になる。
神舘さんは「携帯メールを使い慣れている若い世代は全体のバランスを考えて自然にちりばめられるが、慣れない世代がそのノリに無理して合わせた文面は痛々しい。むしろ堂々と文字だけのメールの方がカッコ良い」と話す。杉山さんは「多めに入れてくる人には多めに、少ない人には少なめにと、関係性や状況によって使い分けて。違う機種間では文字化けする可能性もあるので、大切な内容は文字で伝えて」と忠告する。
やりとりがダラダラと続いて困ったら、最初に送った人から切り上げる。「おやすみなさい」「そろそろお風呂に入らなきゃ」など、結びを感じさせる言葉で切り上げよう。
「気楽に送れる分、性格や人格まで現れてしまうのが携帯メール。文章は自分の分身だと思って、送信する前には必ず読み返して」と神舘さんは強調した。