受賞者のスピーチに笑いと拍手 手塚治虫文化賞贈呈式

第14回手塚治虫文化賞の贈呈式が28日、東京都内であり、受賞者らの個性あふれるスピーチに、関係者や一般の招待客から笑いと拍手が起こった。

 茶道を変革した戦国武将・古田織部を、物欲に突き動かされた型破りな奇人として描く『へうげもの』(講談社)でマンガ大賞を受賞した山田芳裕さんは、「今年は厄年なのに厄払いもせず、こんな大変な賞をいただけるとは思わなかった。あの世に行ったら、まず手塚先生にお礼を言い、織部公には謝罪をします」。

 はかなげな命とのふれあいを描いたファンタジー『虫と歌』(講談社)で新生賞に選ばれた市川春子さんは、札幌市の出版社に勤務しつつ創作を続けている。

 「初めて見た手塚作品は、小学生のとき体育館で見たアニメの『ユニコ』だった。何か輝くような不安のようなものを感じ、知的なざわめきを覚えた。あの時のみずみずしさを忘れずに、頑張っていきたい」

 古代ローマの技師が現代日本の風呂にタイムトリップする『テルマエ・ロマエ』(エンターブレイン)で短編賞を受賞したヤマザキマリさんは、在住するリスボンから贈呈式に合わせ帰国した。「アイスランドの火山が噴火して飛行機が飛ばなかったら、シベリア鉄道に乗ってでも来ようと覚悟していた。16歳の息子が手塚先生の大ファンで、この賞に負けない素晴らしいマンガを死ぬまでに描くと約束を交わした。それを必ずまっとうしたい」

 SF・ギャグ・少女マンガなど幅広い評論活動で特別賞を受賞した米沢嘉博さんは、2006年に亡くなった。賞は妻の英子さんが受け取った。生前、米沢さんを「おにいさん」と呼んでいた英子さんは、「米沢に代わりお礼を申し上げます」と述べた後、「おにいさん、よかったね!」と言ってアトムのブロンズ像を掲げた。(小原篤)

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