【人を育てる 企業が活きる】ダイキン工業 鳥取に社員研修施設

11月19日15時48分配信 産経新聞

 ■自然の中でグローバル人材育成

 日本海に面した鳥取市青谷町の井手ケ浜。海岸沿いに外壁が優美なカーブを描くリゾートホテルのような建物がある。今年4月にオープンしたダイキン工業の研修所「ダイキンアレス青谷」。M&A(企業の買収・合併)などで事業拡大を進め、「世界一の空調機メーカー」を目指す同社は、自然に囲まれたこの施設をグローバル人材の育成拠点と位置づけている。

 大手企業では珍しいが、同社にはこれまで社員向けの研修施設はなかった。「生産設備などへの投資やM&Aを優先してきたため」(人事本部の佐治正規部長)で、研修はホテルなどを借りておこなっていた。

 しかし、マレーシアの空調機大手、OYLインダストリーズ社を買収するなど海外事業を拡大した結果、外国人従業員が増加。今では海外の従業員数(約2万8000人)が国内(約1万1000人)を上回り、本格的な社員教育の場が必要になっていた。そうした中で研修所の建設地として白羽の矢が立ったのが井手ケ浜だった。

 この場所には以前、大阪府池田市の少年自然の家が建っており、ダイキンは26年前から新入社員の合宿研修で利用していた。ところが建物の老朽化と市の財政難で市が施設を手放すことになり、ダイキンが周辺の土地を含めて買収し、研修施設を建設することになった。

 アレスとは「飛翔」を意味するラテン語。7階建て延べ約1万6500平方メートルで、同時通訳ブースを備えた最大210人収容の大研修室や180インチの大スクリーンを設けた円形教室のほか、小人数で討議できる研修室が10カ所ある。溶接、旋盤加工、金型製作といった技能を実習できる研修室もある。

 46室ある宿泊室は、ツインルームでも面積約36平方メートルとゆったりしているのが特徴。部屋ごとにデザインや内装を変え、メゾネットタイプやゲストルームもある。露天風呂付きの大浴場やフィットネスルームを備え、最新の空調設備を導入するなど環境にも配慮している。

 開所以降、アレスではさまざまな研修が行われている。6月には工場で技能指導をするトレーナーを育成するための研修が3週間にわたって行われた。同社には「マイスター」と呼ばれるベテラン技能者が20人いるが、海外拠点を拡大したため、マイスターだけでは回りきれなくなっているためだ。このほか、海外拠点の幹部らによる会議や代理店・特約店の役員を招いてのセミナーも開かれた。

 本社のある大阪からアレスまでの所要時間は鉄道でも車でも約3時間半かかるが、「職場から離れることで研修に集中できるんです」。計画段階で他社の研修施設を20カ所見て回った佐治部長はそう指摘する。

 今後は研修での利用をさらに増やすとともに、施設が空いている時期は社員の保養施設として開放していく考えだ。(竹田徹)

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