12月13日22時30分配信 産経新聞
死者13人、行方不明者10人を出した岩手・宮城内陸地震から14日で半年。今も約330人が山の崩落の危険や道路の寸断などで避難生活を続けているが、到来する積雪の時期は工事を中断せざるを得ず、自宅に帰れぬまま越冬する見通しだ。「来年の作物はどうなるのか」「早く道路を通してほしい」。厳冬を前に被災者たちの不安は募るばかりで、生活再建への道のりは厳しい。(渡部一実)
12日現在、宮城県栗原市は122世帯310人に避難指示・勧告を継続。岩手県一関市、奥州市も6世帯19人に避難勧告を出している。このうち69世帯189人が仮設住宅で暮らし、あとは親類や知人の家に身を寄せている。
自宅近くの山が崩れ、避難指示を受けた栗原市栗駒耕英の農業、及川達夫さん(80)は、市内の仮設住宅で妻(80)と2人暮らし。週に4日ほどの一時帰宅しか認められず、「畑が心配。来年の作物はどうなることやら」とため息をつく。6畳2間の仮設住宅には冷たいすきま風が入り、「元の生活に戻れるか不安で、なかなか眠れない夜もある」と話す。
土砂が河川をせき止めてできた「土砂ダム」の工事も急がれる。震源地に近い一関市厳美町市野々原地区の土砂ダムでは、排水路の拡幅工事のため民家2世帯の移転を検討中だ。
移転対象の農業、佐藤宮男さん(65)は「うちは代々ずっとここで暮らしてきた。いくら危険だといっても、生まれ育った家を出るのはいやだ」と語気を強める。強制移転になっても「今さらこの土地を出てよそに行くつもりはない」と集落内での移住を考えている。
地震では“大動脈”の道路も甚大な被害を受けた。国道342号(岩手)は真湯温泉-須川温泉間の15.3キロ、同398号(宮城)は栗原市花山-秋田県境までの25キロが今も全面通行止めだ。
しかし12月に入り、被災地には雪が降り始めている。来年1月には積雪が始まり、例年雪解けは4~5月。この間、「復旧工事ができず、雪解け後も2次災害を防ぐため慎重に作業する」(岩手県道路環境課)ため、398号の復旧は来年秋、342号は再来年の秋になる見通しだ。
「道が壊れ、秋の紅葉シーズンは売り上げゼロだった。一刻も早く通してほしい」と語るのは栗原市花山の温泉旅館経営、三浦治さん(54)。近くの温泉施設の従業員、大山幸義さん(56)も「雪が溶けてみたら被害が予想以上で開通が遅れることもある」と先行きを不安視する。
長岡技術科学大(新潟)の上村靖司准教授は「雪国の地震では、積雪や雪解け水で道路、家屋の被害が拡大するケースが多い。春以降に被害状況を再調査する必要がある」と指摘している。