1月14日15時27分配信 読売新聞
戦前、戦後の東武鉄道を“牽引(けんいん)”した懐かしの車両2両が、墨田区東向島の東武博物館にこのほど運び込まれ、安住することになった。
同社第1号の電気機関車「ED4001号」と、戦後初の特急電車「5700系モハ5701号」。
開館20周年の同館は、昨年12月末から内部改装のため休館中だが、2両は7月のリニューアルオープンの目玉として、鉄道ファンに公開される。
ED4001号は1930年(昭和5年)にイングリッシュ・エレクトリック社が製造。貨物列車を40年以上引っ張った後、73年に滋賀県の近江鉄道に譲渡され、86年の引退後は彦根駅構内で保存されていた。
一方、5700系は51年9月に浅草-東武日光・鬼怒川温泉間を結ぶ特急ロマンスカーとしてデビューした。
戦後、東武が初めて自社設計した車両で、改造される前は、フロントガラス下のヘッドマーク支持金具の形から「ネコひげ」の愛称で親しまれた。戦後の混乱を脱し、観光旅行が復活した頃。国鉄は56年、上野-日光間にそれまでの蒸気機関車に替えて新型ディーゼルカーを走らせて対抗し、激しい旅客輸送競争を展開した。
ネコひげは5年で急行用に降格。69年以降、91年の引退まで修学旅行などに使われた。展示車両は埼玉県宮代町の東武動物公園駅構内で保存されていた。
2両とも10メートルを超える長さがあり、東武伊勢崎線東向島駅の高架下にある同博物館への搬入作業は、周辺の道路交通を妨げないよう、夜間に行われた。
11日午前3時すぎ、大型トレーラーに積載された2両が順次、博物館の隣の小学校の校庭に到着した。日の出後の午前7時から、作業員約50人が移設作業に着手。大型クレーンでつり上げ、約3時間かけて2両を博物館の中庭に移した。
同館では、東武初の蒸気機関車「5号」「6号」、電車「デハ1形5号」も保存している。東武鉄道では「東武鉄道の歴史を語る最初の蒸気機関車、電車、電気機関車が一堂にそろう。他の博物館にはない展示を目指す」と話している。(伊藤史彦)