1月15日1時2分配信 産経新聞
日本郵政が「かんぽの宿」70施設についてオリックスグループと一括譲渡契約を結んだ問題で、鳩山邦夫総務相は14日、日本郵政の西川善文社長を総務省に呼び、譲渡までの経緯を聴いた。西川氏は公募や入札などが適正に行われたことを説明したが、鳩山氏は「今のところ私が納得する可能性は限りなくゼロに近い」と述べ、譲渡の際に必要な会社分割を許可しない考えを重ねて表明。4月1日の譲渡完了は困難な情勢となった。
14日午後3時20分、西川氏は東京・霞が関の総務省大臣室を訪ねた。鳩山氏との会談は約45分間。西川氏はレジュメを見ながら淡々と経緯を説明。鳩山氏は「なぜ譲渡先がオリックスなのか」「なぜ一括譲渡しなければならないのか」と次々に疑問をぶつけると、西川氏は「従業員の雇用確保が最も大きい」と説明し、理解を求めた。
だが、鳩山氏は納得せず、西川氏は日本郵政内に弁護士や不動産鑑定士ら専門家による検討委員会をつくり、譲渡経緯を調査することを約束。「総務相の理解を得られるまで認可は求めない」と述べたという。
会談後、鳩山氏は記者団に対し、「西川氏の説明では納得できなかった」と語り、今の譲渡契約では賛同しない考えを表明。特に譲渡額約109億円について「安すぎる」と強い疑念を抱いており、総務省で独自に資産価値を調査する考えを示した。今週末には大分県内の「かんぽの宿」をプライベートで“視察”する予定も明かした。
一方、西川氏は面談後、報道陣の取材には応えず、「検討委員会を設置し、真摯(しんし)に検討してまいりたい」とのコメントを文書で出しただけだった。
日本郵政が譲渡契約を結んだのは主に昭和30~50年代に全国の温泉地や景勝地に開業した「かんぽの宿」69施設と、さいたま市の宿泊施設「ラフレさいたま」(平成12年開業)。加えて東京都品川区や横浜市など首都圏にある2~7階建ての社宅9棟も含まれる。
日本郵政側は、今年3月期末時点の想定資産額は141億円で、年間約50億円の負債を勘案すれば純資産は93億円にすぎず、「譲渡価格は適正だ」と説明する。だが、「いくら何でも格安だ」(自民中堅)との声が相次いでいる。
日本郵政は政府が株を100%保有する特殊会社で、総務相の認可がなければ会社分割はできない。民主党など野党も今後も譲渡問題を徹底追及する構えを見せており、契約が宙に浮く可能性が高まっている。