2月3日8時1分配信 産経新聞
県内のほぼ中心部に位置し、約100軒のホテルや旅館が点在する石和温泉。東京から約1時間半で来られる利便性から、団体客を乗せた大型バスが次々に到着するほか、JR石和温泉駅前ではホテルや旅館名が記された小型バスが団体宿泊客を迎える。大勢でどんちゃん騒ぎをする歓楽型温泉として栄えてきた。
しかし、「バブル崩壊後は、目に見えてにぎわいがなくなっている」(山梨県職員)。現在、同温泉の歓楽街では、シャッターを閉じたままの店も目立つ。こうした中で、温泉街ではイメージ脱却を図る動きも活発になっている。
温泉を使ってリハビリや病気予防を図る病院が周辺に次々と立地した。平成に入ってまもなく、「長寿社会に向けたかじ取りを図っている」などと評され、NPO法人健康と温泉フォーラム(東京)の「名湯百選」に選ばれたのだった。
最近は、ホテルや旅館が、正しい入浴法を教えたり、生活アドバイスをする取り組みを積極導入。取り組みを認定する厚生労働省の「温泉利用プログラム型健康増進施設」は現在、全国31軒中で石和温泉のホテル・旅館が9軒を占める。
ホテルなどが協力し平成19年4月に有料の足湯ひろば、翌年に笛吹市が駅前に無料の足湯を新設。小人数客が到着後すぐに温泉気分を味わえるようになった。
個人客を振り向かせ、健康志向などのニーズを満たすことができるのか。温泉街の挑戦が続いている。(花岡文也)
◇
【用語解説】石和温泉(いさわおんせん)
昭和36年、ブドウ畑を開発しようと井戸を掘ったら、偶然、湯が噴出したのが始まり。湯をためて住民らが湯に入り、「青空温泉」として話題を集めた。高度成長やバブル期を通じ、団体客向けの歓楽型温泉として発展した。
健康と温泉FORUM実行委員会(現NPO法人健康と温泉フォーラム)が63年から3年間でまとめた、温泉療法医が勧める「名湯百選」(基準を満たす79件選定)に、山梨県内で下部、増富温泉とともに選出。石和温泉旅館協同組合(電)055・262・3626。