銀の国・新百景:大正ロマンの窓の外 夕闇迫る出湯の町 /島根

2月5日17時1分配信 毎日新聞

 温泉津温泉(大田市温泉津町)はわが国で唯一、世界遺産に登録された出湯(いでゆ)の町だ。筋向かいに並ぶ「薬師湯」と「元湯」。2軒の外湯が、それぞれの源泉を大切に守り継いできた。
 薬師湯に隣接する木造2階建ての旧館は、1919(大正8)年の建築。07年春、脱衣場を隔てていた男女の壁を取り払い、喫茶店「内蔵丞(くらのじょう)」(内藤央真さん経営)が誕生した。どっしり落ち着いた調度品の数々が大正ロマンの設(しつら)いを一層引き立てている。
 窓際から、夕闇迫る温泉街を眺めた。前に見える旅館の灯(あか)りが刻一刻と輝きを増す。裏手にある厨房(ちゅうぼう)の戸が開いたり閉まったり、人の出入りがさっきより活発になってきた。
 カランコロンと懐かしい下駄(げた)の響きが近づいてくる。ガラス窓の外を、浴衣に着替えた旅人が外湯目指して通り過ぎて行った。【船津健一】

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