「出身は千葉県」…神戸での市橋容疑者、“逃亡者”の雰囲気なく

千葉県市川市で2007年3月、英国人女性リンゼイ・アン・ホーカーさん(当時22歳)の遺体が見つかった事件で、死体遺棄容疑で逮捕された市橋達也容疑者(30)は、同県警行徳署捜査本部の取り調べに対し、家族の話など身上や経歴については、うなだれた様子でうつむきながらも小声で答えるが、容疑について聞かれると、無言になるという。捜査本部は12日、市橋容疑者を千葉地検に送検し、調べを進める。

風呂で眼鏡取り、顔隠さず
市橋容疑者が、大阪府茨木市の建設会社で勤務する約2か月前の2008年6月までの4か月間、住み込みで働いていたとみられる神戸市北区の土木会社が11日、記者会見を開いた。雇用契約書には、茨木市の建設会社に伝えたのと同じ「井上康介」の偽名やうその生年月日が記され、「大阪市港区」などとする連絡先もほぼ同じだった。必要以上に顔を隠すことはなく、〈逃亡者〉の雰囲気はなかったという。

 土木会社の専務(46)によると、市橋容疑者とみられる男は08年2月28日、同社が大阪市西成区で労働者を募集した際に、「仕事がないか」と近づいてきたという。

 主に京都府舞鶴市の工場解体現場で勤務。同年6月26日に給料を受け取り、「明日も働く」と言っていたが、翌朝には姿を消していた。約4か月間で約55万円を受け取ったという。

 整形後の写真が公開されて従業員が気づき、今月10日に兵庫県警有馬署へ相談した。

 上司(52)によると、容姿は整形後の写真に近いが、まゆが太く、黒縁の眼鏡をかけて、髪の毛を後ろに束ねていた。風呂場では眼鏡を取り、顔を隠すようなそぶりはなかった。寮の3畳半の個室で生活し、マンガ雑誌をよく読み、好きなキャラクターに詳しかった。「おやじギャグ」を言うこともあったという。

 仕事ではトラブルは一切なく、仕事の行き帰りなどには「出身は千葉県」「旅行に行きたいから金をためたい」などと話したという。

 上司は「性格は温厚で、おとなしかった。本当に驚いた。罪を償ってやり直してほしい」と話していた。

「営業の仕事で奄美大島へ」
 一方、神戸市のタクシー会社によると、市橋容疑者とみられる男は逮捕直前の10日午後、神戸市東灘区のJR住吉駅前からタクシーを利用し、神戸・六甲アイランド内のフェリーターミナルへ行ったが、この日は神戸発のフェリーがないため、同じタクシーで大阪・南港へ移動した。男は、「営業の仕事で奄美大島へ行く」と話していたという。

 車内で男は、ラジオを別のチャンネルにするよう求め、FM放送の音楽チャンネルに合わせると、「アップテンポな音楽が好きなんです」などと話したという。

(2009年11月12日 読売新聞)

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