見つめた死、湯灌師が本に 豊橋の中村さん「命の通過点」

葬儀の際に遺体を清めるなどする湯灌(ゆかん)師、納棺師の中村典子さん(46)=豊橋市森岡町=が、現場で体験したエピソードや思いをまとめた本「ご遺体専門美容室~死の現場から~」を執筆した。1月下旬、全国の書店で発売される。

 「多くのご遺体に触れるうち、死は忌み嫌うものではなくて、次の世代に受け継ぐ命の通過点と感じるようになった。ありのままに心の動きを伝えたい」。映画「おくりびと」でぐっと身近になった葬儀の仕事だが、従事者の声が届く機会は、まだ少ないとの思いがある。年間1000体を超える遺体を送り出す現場での出来事や、遺族との交流もつづった。

 中村さんは、会計事務所職員だった6年前、求人情報で湯灌師を知り、転職を決意。1年間の研修を経て、岡崎市に湯灌会社「エンゼルサービス」を設立し、スタッフ4人とともに三河地方全域と静岡県の一部で“おくりびと”を務めている。

 映画に登場したようなきれいな遺体ばかりではない。事件や交通事故、孤独死後の時間経過などで、激しく傷ついた遺体にも対面する。

 それでも「お葬式の主人公は、亡くなった方。誰よりもおしゃれをして、最高に素敵な姿で旅立ってもらう」と中村さん。「美容室」を名乗り、風呂でさっぱりした故人を、美しく化粧して納棺する。本では、湯灌師を志す仲間が増えることも期待して、仕事ぶりも紹介した。

 B6判94ページで、1200円。中村さんの意志で、印税は全額、児童福祉施設に寄付するという。(問)発行元のウィッシュ・パブリッシング=電0564(23)1135

 (中野祐紀)

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