生後6カ月の長男の頭部を水道の蛇口にぶつけるなどして重傷を負わせたとして、大阪府警四條畷署は12日、傷害容疑で大阪府大東市北条のとび職、木邨(きむら)諒(りょう)容疑者(21)を逮捕したと発表した。四條畷署によると、木邨容疑者は「意味もなく泣くのでイライラしてやった」と容疑を認めているという。
逮捕容疑は昨年11月上旬から今年1月24日にかけ、自宅マンションで、長男の頭部を風呂場の水道の蛇口にぶつけるなどの暴行を加え、くも膜下出血などのけがを負わせたとしている。長男は頭などに重傷を負い入院中だが、快方に向かっているという。
木邨容疑者は「お風呂に入れるとぐずつくので、腹が立った。育て方が分からないというか、意味なく泣くことでイライラしてついたたいてしまった。自分1人でやった。嫁はやっていない」と供述。
長男の顔や体には複数のあざがあり、「寝返りさせようと尻をたたいたり、あごにかみついたこともある」とも供述しており、四條畷署は、虐待が常態化していた可能性もあるとみて調べている。
木邨容疑者は妻(21)と長男の3人暮らし。昨年4月に結婚し、翌月から今のマンションで暮らし始めた。長男は昨年9月に生まれたが、同じマンションに住む女性によると、昨秋から「うるさい。静かにせえ」という男の怒鳴り声や赤ちゃんの泣き声が頻繁に聞こえるようになった。
祖母「虐待に違いない」 異変気付き病院受診
危ないところで幼い命を救ったのは祖母だった。今年1月24日昼、木邨容疑者の自宅を訪ねた妻の母親は、一目で長男の目の周りが真っ黒なのに気づいた。激しく殴られたような内出血の跡。「これは虐待に違いない」。すぐに大阪市内の病院を受診した。
診断結果は、くも膜下出血のほか、顔のあざ、眼底出血など虐待を疑わせるものばかり。病院は府中央子ども家庭センターへ通告し、長男は保護された。
同じマンションの住民に「ちゃらちゃらしていて買い物でカートごと商品を持って帰ってきたりする非常識な人」という印象を持たれていた木邨容疑者。
虐待は昨年秋から常態化していたとみられ、近所の人も家族の中では「虐待しているのかも」とうわさしていたが、仕返しなどを恐れ、通報していなかった。
ただ、大東市の担当職員は昨年12月、乳児を対象にした全戸訪問で木邨容疑者宅を訪ねたが、長男の異変は分からなかったという。
児童虐待問題に詳しい花園大の津崎哲郎教授は「子育ての準備ができないまま大人になったような若い夫婦は多い。行政や近所だけでなく、身内の積極的なフォローで虐待の早期発見は可能だ」と話している。