福山市が進める市道脇の水路への転落防止対策が、手城地区だけ4年以上も手つかずのまま放置されている。市は「一部住民に反対意見があるため」として、整備の予定は当面ない。一方で安全対策を求める住民もいて、地域の難しい課題になっている。
福山市では、平野部の広がる南部を中心に古くから水路が道路沿いに設けられてきた。かつては風呂の水にも使われ、農業用、防火用などとして今も住民生活を支える。
それが人や自転車が転落する事故が相次いだため、市は2003年度から3カ年で市中心部の水路にガードパイプなどを緊急設置した。市中心部約2200ヘクタールをエリアに毎年度約2億円を投じ、総延長約38キロのうち約34キロで完了した。未整備の大半が手城、南手城、東手城の3町内だ。
市は、手城地区で整備が進まない理由を「地元合意がない。反対意見がある事業は進められない」と説明する。農業用水として利用してきた水利関係者から「水路の掃除が難しくなる」などと根強い反対があるという。
一方で、地元町内会は児童の通学路脇の水路へふたをするよう市に何度も要望書を提出してきた。 市内の水路やため池へ落ち、死者が出た事故は2000~09年度だけで33件もある。今月9日にもガードレールが一部未設置だった同市神村町のため池に乗用車が落ち、2人が亡くなった。
市も「なんとか住民の合意が得られれば、早期着手できるのだが」と頭を悩ませている。