11月22日8時1分配信 産経新聞
■正しい方法で入浴/郷土料理を楽しむ/地域の自然で運動
運動でかいた汗を温泉で流し、郷土料理に舌鼓を打って元気になる「健康づくり大学」が各地に開設され、人気を集めている。温泉地を抱える自治体をキャンパスに見立て、湯治の入浴法を学んだり、生体機能を高める運動をしたり、地元の健康食を楽しむ企画だ。いくつかの自治体では、常設化して1年中楽しめる態勢づくりが検討されている。(森本昌彦)
18日、神奈川県厚木市で開かれた健康づくり大学には、37人が参加した。キャンパスは市北西部の七沢温泉だ。まず専門家からノルディックウオーキングの指導を受け、森の中を約3キロ歩いて気持ちいい汗。続いて4カ所の旅館に分かれ、温泉に入浴。昼食は猪鍋や手作りこんにゃくなどの郷土料理を楽しんだ。
参加者からは「いい運動になるね」「健康になって医療費を減らさなくっちゃ」という声が聞かれる。
今回で5回目の開催となる厚木市。七沢、飯山の2つの温泉の観光客が最盛期に比べほぼ半減したことから、温泉を利用した地域活性化策を検討。経済産業省所管の社団法人「民間活力開発機構」が提唱し、開催に協力している健康づくり大学を、平成18年11月に初めて導入、開催した。
定員を上回る応募があることもあり、反応は上々だ。今回で4回目の参加となった東京都日野市の伊藤重雄さん(69)は「来るのがとても楽しみ。学んだ運動法は日常生活にも役立っている」と話す。
市は年2回開いており、今年度は3月にも開催。来年度以降も続ける予定で、地域再生課長の松本辰秀さん(56)は「健康づくり大学の開催で、市民だけでなく市外の人にも厚木の温泉の魅力を知ってもらい、観光活性化を図りたい」と意欲を見せる。
住民の健康増進を目的に、健康づくり大学を開催する自治体もある。滋賀県湖北町は今年7~12月に毎月1回、町民40人を対象に実施。専門家からウオーキング法や地元産野菜を使った健康食の料理法を学ぶほか、体重や歩数を毎日記録し、健康向上につながる意識づけを図る。
運営を担当する政策調整室の森岡賢哉さん(34)も参加者の1人で、参加前に比べて体重は約5キロ、腹位も約4センチ減ったという。「毎日の記録を付けることが、意識改革につながる。参加者の大半に効果が出ている」と話す。
厚木市や湖北町以外にも健康づくり大学は全国に広がっている。16年に提唱されて以降、これまでに全国25自治体が参加。「『現代版湯治』の復興をめざしている」と語るのは同機構の事業企画部長、稲田成吾さん(50)。
「温泉に行くだけで湯治という印象が強いが、昔の人は温泉に入り、その土地の産物を食べ、運動もして病気を治してきた。温泉、食事、運動、環境の4療法を組み合わせたのが健康づくり大学」
「現在は期限開催だが、宿泊施設や公共施設などが連携して常設化するグリーンガーデン構想を、いくつかの自治体で進めている。住民や観光客がいつでも温泉や地元産物を使った料理、運動を楽しめるようになる」という。
温泉療法に詳しい医師で健康づくりシステム研究会会長の植田理彦さん(81)は「温泉に漫然と入るのではなく、正しい方法で入浴し、栄養価の高い郷土料理を食べたり、地域の環境を利用して運動したりすれば健康効果が高まり、生活の質を向上できる」と指摘。「身も心も健全な人を増やすため、こうした取り組みは必要だ」と話している。