11月23日12時0分配信 毎日新聞
22種類・約200頭のワニを飼育している東伊豆町奈良本の「熱川バナナワニ園」。園独自の分類だと、世界のワニの種類は30種。23年間にわたりワニの飼育を続けている浜野芳弘・飼育係長(46)は「種類の多さでは世界一のワニ園」と自負する。
浜野さんは相模湾に浮かぶ伊豆大島出身。島の高校在学中から同園でアルバイト、卒業と同時に同園に就職した。最初は植物が主だったが、4年後に動物の飼育係になった。
浜野さんは「どう猛なワニと温厚なワニは種類にもよるが、人間の個人差と同じで、個体による差も大きい。気性の激しいワニは、どう猛と言われるが、本当は神経質なんです」と話す。
現在、同園ではイリエワニが最大で体長4メートル。コビトカイマン、ブラジルカイマンが小さくて1・5メートル。野生のイリエワニは7メートルにも成長するが「野生のワニは映像でしか見たことがありません」と苦笑いする。
一番気を使うのは餌。ふ化したばかりの赤ちゃんは体長15センチ、体重30グラムから同30センチ、150グラム前後。主に鶏肉をミンチにして与え、成長するに従って肉片を大きくしていく。食事は夏は1週間に1度、冬は2週間に1度が目安。平均で10年後に大人の仲間入りしたときはホッとする。
飼育係を始めてから、スタッフがたまに指をかまれることもあるが、命にかかわるような大きな事故はなかった。大きなワニに近づくときは、細心の注意を払うが、小さなワニだとつい油断することもあるという。
ワニの寿命は60歳。1958年の開園だから、ワニの半数は浜野さんの“先輩”だ。「ワニに死なれるのが何よりもつらい」としみじみとした口調で語る。死因の大半がワニ同士の勢力争いなどによるいじめからくるストレス。気がついたら、隔離するようにしている。
「入園者の『可愛い』」という声を聞くのもうれしいが、ワニだから『怖い』も褒め言葉。一番うれしいのが『迫力がある』という言葉です」と話す。【中村隆】
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◇熱川バナナワニ園
温泉熱を利用して、ワニの飼育とともに熱帯植物を展示する全国的に有名な伊豆半島の観光施設。ワニ園、植物園、果樹園の3エリアがあり、共通入場料は高校生以上1300円、4歳以上650円。開園時間は午前8時半から午後5時。無休。伊豆急行伊豆熱川駅から徒歩1分。