11月24日15時1分配信 毎日新聞
◇来年1月昇格披露
安来節保存会の名人(唄(うた)の部)に、西村利美さん(71)=安来市切川町=が選ばれ、来年1月10日に免状授与式と昇格披露が行われる。安来節発祥の地である安来から唄の部では、1950年の遠藤お直名人以来の名人誕生となる。【岡崎英遠】
安来節保存会では全国約8000人の会員の中で、唄や絃(げん)(三味線)、鼓などの名人を合わせても7人しかいない。8人目に名を連ねることに西村さんは「感無量。安来節をますます普及、発展させたい」と話す。
広瀬生まれの西村さんは親や兄が安来節を唄っていたのを聞いて育ったという。56年に安来節保存会に入会。就職先の日立金属で出会った安来節の大先輩、故山本晴夫氏に「西村、お前うまいなあ、誰に習った」と言われ本気になった。昨年亡くなった野坂亮利名人(三味線)とも同じ会社で民謡同好会を設立したりした。
会社で接待がある時など、宴席でのどを披露するため玉造温泉(松江市)や皆生温泉(鳥取県米子市)に上司から呼ばれて大分得をしたと笑う。
半世紀以上に渡り安来節保存会で活動し、現在は本部の道場長として後進の指導にあたる。唄だけではなく絃や鼓も教える。「一番の課題は後継者の育成」という西村さんは、地域の小学校の総合学習の時間に唄いに行ったり、「みんなで唄おう安来節」というコンクールを主催して、安来節の普及に努めている。
今年6月には県からの要請で、ブラジル公演に出かけた。現地の島根県人会では、県内からブラジルに渡った80歳を超えた老人たちが舞台に上がってきて涙ながらに一緒に踊ったりした。
安来節の唄となる選定歌詞は250を超える。その中で西村さんはいつも「芸はなけれど、生まれは出雲、下手も自慢の安来節」と唄い始めるという。西村さんの心境を表すお気に入りの歌詞だ。
「安来節は唄の文句や節回しなども唄う人によって全く違う。お客さんが良い唄だなって思ってくれたら拍手してくれる。それが生きがいです」と話した。