25時:しんすけの店 /宮崎

11月25日13時3分配信 毎日新聞

 宮崎市の住宅街にある総菜店「しんすけの店」で、店を切り盛りするダウン症の野崎信輔さん(42)と両親の物語を15日の本紙社会面「紙ふうせん」で報じた。この記事の行数では伝えきれなかったことを、本欄で書いてみたい。
 父恭平さん78歳、母晃子(てるこ)さん73歳。足腰は丈夫で、顔色は健康的、会話も弾むように言葉が次々と出てくる。「え、もっと若く見える」というのが、年齢を聞いた時の感想だ。恭平さんは「この子から幸せをもらって、健康でいられる」と笑顔を絶やさない。
 晃子さんも「この子の世話に一生振り回されると思って泣いた日もあった」と生後間もなくダウン症と知らされた時を振り返り「それは大きな間違いだった。信君がやさしさを振りまいている」と優しいまなざしでわが子を見つめる。
 「信君、次の休みはどこに行こうか」と晃子さんが尋ねると「高岡の温泉!」と信輔さんが即答する。「信輔は温泉が好きでね。家族3人でドライブをして温泉に行くのが楽しみ」と恭平さん。何気ない3人の会話に癒やされる取材だった。
 ただ、ここまで家族が来るのは平たんな道のりではなかったし、現実も厳しい。「私が元気でいられるのは信輔のおかげ。それと同時にこの子を残して死んでいけないという思いもある」。笑顔を寂しげな表情に変えて恭平さんが発した言葉はズシリと重かった。【種市房子】

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