「アイ・キャント・スピーク・イングリッシュ」で笑い誘う

12月9日0時1分配信 読売新聞

 【ストックホルム=山田哲朗、阿利明美】ノーベル賞授賞式を前にした8日、受賞者の栄誉とされる記念講演にのぞんだ3人の日本人受賞者。

 異例の英語字幕付き日本語講演となった益川敏英・京都産業大教授(68)は緊張した面持ちで、アドリブなしで原稿を読み上げた。

 しかし、壇上から降りた後は高揚した表情で「緊張するタマではない」と相変わらずの<益川節>を展開。一方で小林誠・日本学術振興会理事(64)や下村脩・米ボストン大名誉教授(80)は、滑らかな英語で穏やかに研究の経緯を語った。

 「アイ・アム・ソーリー。アイ・キャンノット・スピーク・イングリッシュ(ごめんなさい。英語は話せません)」。益川さんはグレーのスーツ姿で緊張した表情で登壇した。しかし、開口一番飛び出した英語が、会場の笑いを誘って、一気に和やかなムードになった。

 講演には子供時代の話を盛り込んだ。勉強嫌いを心配した母が、「たまには宿題を出してほしい」と教師に訴えたところ、「出しているが、おたくのお子さんが(宿題を)しないだけ」と逆に言われたという逸話を紹介。「両親からたっぷり2時間、説教を食らいました」とちゃめっ気を交えて告白した。

 しかし、戦後の銭湯がよいの道で自然の仕組みなどについて語ってくれた父を振り返り、「勉強はダメだったが、父の話のおかげで、授業以外の先生の質問には答えられる、おかしな少年だった」と「理科好き」になった道を振り返った。

 ストックホルム大の学生ら700人余の聴講者も、益川さんの背後の字幕スクリーンを読みながら、講演に引き込まれていくようだった。

 一方の小林さんはメガネ姿で登壇。2001年、「小林・益川理論」を実験で実証し、ノーベル賞受賞を後押しした茨城県つくば市の実験施設「Bファクトリー」の研究や、同じくニュートリノ研究で理論を検証しながら、今年7月に亡くなった戸塚洋二・東大特別栄誉教授などを紹介。物理学界への日本の貢献度を上品に売り込んだ。

 化学賞の下村さんも英語で講演した。クラゲから発見した発光物質GFPの入った試験管に紫外線を当てて、光らせる実験を行うなど、化学を身近に感じさせる内容。理論物理に比べて理解しやすいものだったためか、約1200人収容の会場は満席になった。

 「原爆投下で学べる場所がなくなった」と焼け野原の故郷・長崎の写真を映すと、会場は水を打ったように静かに。一方で、桟橋に立つ家族写真を示し、「これがクラゲ収集家たちです」と85万匹を集め続けた日々を紹介して、会場の笑いを誘った。

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