12月8日19時41分配信 産経新聞
【ストックホルム=木村正人】今年のノーベル物理学賞を受賞した高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)名誉教授の小林誠(64)と京都大名誉教授で京都産業大理学部教授の益川敏英(68)、化学賞の米ウッズホール海洋生物学研究所・元上席研究員、下村脩(おさむ)(80)の3氏が8日、ストックホルム大で記念講演した。
物理学賞の米シカゴ大名誉教授で大阪市立大名誉教授の南部陽一郎氏(87)の記念講演は共同研究者だったローマ大のヨナラシーニョ教授が代わりに行い、南部氏が日本の素粒子物理学を築いた仁科芳雄、朝永振一郎、湯川秀樹各氏に影響を受けたことを紹介。弾性のある細い円柱に上部から圧力をかけた場合、力が強くなると円柱が折れて対称性の破れが起きることをわかりやすく説明した。
小林氏は「名古屋大の故・坂田昌一博士が1956年に提唱した坂田模型は基本粒子クォーク模型の先駆けだった」と恩師の偉業をたたえた。4つのクォークモデルでは対称性の破れが説明できないため「一つの可能な模型として6つのクォークモデルを提唱した」と益川氏との共同研究を回想した。
その後、素粒子物理学の理論は高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)やスーパーカミオカンデ(岐阜県に建設されたニュートリノ検出装置)の実験で確認されており、小林氏は「日本の貢献は大きい」と実験的研究での日本の底力もアピールした。
英語が大の苦手の益川氏はこの日も日本語で、電気技師を目指しながらも戦後、砂糖問屋を営んでいた父親が理科の知識と面白さを教えてくれた思い出を振り返った。4つのクォークモデルでは対称性の破れが説明できないと悟り風呂を出ようとした瞬間、「6つのモデルで行けばよいと気づいた」と語り、会場の笑いを誘っていた。