12月9日15時45分配信 産経新聞
■皮肉たっぷり社会風刺喜劇 21日から 京都劇場
劇団四季のために福田恆存が書き下ろした傑作風刺喜劇「解ってたまるか!」が、関西では初めて、21日から京都劇場(JR京都駅ビル内)で上演される。主人公のライフル魔を演じる加藤敬二に意気込みを聞いた。(平松澄子)
この作品は日下武史主演で昭和43年6月に初演。福田はその年の2月に静岡県の寸又峡温泉で起きたライフル魔による篭城(ろうじょう)事件、いわゆる「金嬉老事件」に刺激されて、すぐに劇作化したという。その後、37年の長い時を経て、平成17年に加藤主演で再演。改めて作品の評価が高まり、19年、20年と続いて上演された。東京以外の公演は京都が初めてになる。
村木明男(加藤)は2人をライフルで射殺したあと、12人を人質にとってホテルのスイートルームに立てこもる。記者会見を開き、荒唐無稽(むけい)な要求を突きつける村木と、振り回される警察、マスコミ、文化人たちとの激しく、コミカルなやりとりが続いて…。
最初の“劇場型犯罪”といわれるこの事件を、福田は日本社会の愚かさをあぶりだしたととらえ、文化人たちへの強烈な皮肉をシニカルな笑いの中に織り込み、知的で上質な社会風刺作品に仕立てた。
ダンサーで振付家でもある加藤にとって、この作品は2作目のストレートプレー。「ぼくは最初、実際の事件のことも知らなかった。とにかくセリフの量が膨大で、劇場に4日間泊まり込んで必死で覚えたんです」。2度目の公演の前には現実に事件が起こった寸又峡温泉にも出かけた。「人質だった温泉宿の女将(おかみ)さんの話も聞けたんですが、言葉にならないぐらいの恐怖だったそうです」
しっかり役作り、イメージ作りができた3度目の公演。加藤は「村木は不器用な人間で、世間がそうさせた社会的ヒーローだと思う。計算され尽くした芝居で、練り込んでいけばいくほど、お芝居の枠を超えたおもしろさがある。ちょっと肩の力を抜く感じで、楽しんでやるようにしたい」と自信を見せた。
公演は来年1月11日まで。問い合わせは劇団四季予約センターTEL0120・489・444。