12月17日17時3分配信 毎日新聞
別府市で始まった温泉泊覧会、略して「オンパク」が、全国に広がっている。地域の隠れた観光資源を掘り起こし、観光客と地元住民が共に楽しめるメニューを取りそろえたイベントだ。本家のオンパクを開催してきたNPO法人ハットウ・オンパク(別府市、鶴田浩一郎・代表理事)がさまざまな形で支援しており、関係者は「10年度には全国30地域で開催したい」と意気込む。【祝部幹雄、平野美紀、小原擁】
◇隠れた観光資源発掘
オンパクは01年秋、別府市の旅館業界が中心となって「別府八湯(はっとう)温泉泊覧会」として始まった。路地裏探索や庭園を見ながら楽しむ落語、田植えや酒造り体験など、市内や近隣に眠る魅力的な観光資源を掘り起こしイベント化する。催しは年々増えて今春は105種類、計3600人が参加した。
これが「新たな地域おこしの手法」と注目を浴び、06年度、北海道函館市・湯の川温泉が「はこだて湯の川オンパク」を開いたのを皮切りに、各地に広まった。今年度は10カ所で開催予定だ。
国もブームを後押しする。NPOオンパクは07年度から経済産業省の「地域新事業活性化中間支援機能強化事業」の助成を受け、メンバーが開催希望地を訪れてイベントの手法を指導したり、ネットでの予約システムなどを提供している。
宮崎県都城市や三股町では今年10月、16日間の「都城盆地博覧会」(通称・ボンパク)が開かれ、盆地の食や自然の良さを体感できる24イベントに約430人が参加した。「女性限定ワインバー巡り」と「都城島津邸コンサート」などが特に人気だったという。
第三セクター「都城まちづくり会社」が中心になって実行委を作り、開催まで7回の講習会を開くなどNPOオンパクの支援を受けた。実行委の佐土原太志事務局長は「まち歩きイベントを計画する時に『ここを休憩場所に』などきめ細かな段取りを学んだ」と話す。
福岡県久留米市では11月の1カ月間、市や商工会議所などで組織する実行委が「久留米ほとめき まち旅博覧会」を開催。1065人が散策を楽しんだ。
豚骨ラーメン発祥の地で屋台や飲食店を飲み歩くツアー▽久留米絣(かすり)の機織り体験▽禅寺での座禅体験――など「秋の筑後路を食べて、見て、感じる」プログラム39種類。これをきっかけに、市中心部の飲食店などが3軒の飲み屋を3500円ではしごする「飲み歩きツアー」も始まった。
「観光客だけでなく、市民が我がまちの良さを再発見してくれた」と実行委。地元の人が新たな魅力を発見するのも、オンパク型イベントの狙いだ。
NPOオンパクの鶴田代表理事は「オンパクは、まちおこしにやる気がある人が集まり『自分たちも楽しい』ことを探していくスタイル。参加した人も楽しいのでリピーターになるし、地元の人がより深く地元を愛することになる」と、さらなる普及に走り回る決意だ。