12月18日18時33分配信 産経新聞
北海道余市(よいち)町出身の宇宙飛行士、毛利衛(もうりまもる)さん(60)の功績をたたえ、同町に建設された「余市宇宙記念館」が、18日で休館することになった。
記念館を運営する第三セクター、株式会社「余市宇宙記念館」(社長・上野盛・余市町長)が18日に開いた臨時株主総会で、会社の解散と精算を決めたためだ。入館者数の減少による赤字の増加が主な理由。
余市町では、休館後も施設を残し、民間委託など、さまざまな再生の道を模索し、来年度のできるだけ早い時期に営業を再開させたいとしている。しかし、具体的な再生案はなく、再開には困難が予想される。
臨時株式総会後、上野町長らが記者会見し、休館の理由について、新谷邦夫(あらやくにお)副町長が「開館の4、5年後から入館者が減少してきた。営業努力をしてきたが、歯止めがかからなかった。町もいろんなことを考えてきたが、このような残念な結果になった」と説明した。
19日以降、記念館の展示コーナーや売店などすべての営業を打ち切り、社員4人も12月末で全員解雇となる。
同館は、平成4年に日本人として初めてスペースシャトルに搭乗した毛利さんの功績を伝えようと、平成10年4月に総額約27億円をかけてオープンした。
同社の資本金9050万円のうち75%を市が負担。無重力の宇宙遊泳を疑似体験できるアトラクションなどを目玉に、宇宙食や毛利さんが着た訓練服などを展示していた。
同館によると、開館当初は人気が高く、初年度の平成10年度には15万1164人が訪れたものの、入館者数は年々減少。19年度には4万5061人まで落ち込んだ。特に11月から3月までの冬の期間の入館者数が少なかったという。19年度末までの累積損失額は7518万円に及んだ。
記念館が休館になることを知り18日、記念館に来た町内に住む無職、金子勝彦さん(75)は「余市町の名物がなくなってしまうのはさみしい。開館当時の盛大なイベントを懐かしく思いだし、写真を撮りに来た」と話した。
また、かつて毛利さんの実家があった場所で「宇宙の湯 余市川温泉」を経営する茅根(かやね)英昭さん(36)は「余市町は毛利さんの故郷であるだけに残念。総合的に利用できる施設にするなど、さまざまな工夫を凝らして、記念館を再開させてほしい」と話した。宇宙への夢がつまった記念館の“再打ち上げ”はなるのか。