12月22日8時2分配信 産経新聞
入札による売却が決まった三重県伊賀市西明寺の厚生年金福祉施設「ウェルサンピア伊賀」について、新会社による存続を目指す発起人会に、市民などから多くの協賛予約が集まり始めている。新会社が施設を落札するには、より多くの資金捻出(ねんしゅつ)が不可欠で、発起人会では「存続は市民の理解と協力にかかっている」と、協賛を呼びかけている。
同施設については、同市や市自治会連合会、上野商工会議所などの代表が、「公的施設として大きな役割を担っている。なくなれば地域住民にとって大きな損失」として発起人会を組織。今月14日から株主と協賛金の予約受付を開始した。
発起人会代表の鹿野俊介・ウェルサンピア伊賀顧問(65)によると、市民などの反響は大きく、電話などで予約申し込みが相次いでいる。協賛金は1口2000円で、金額以上の温泉入浴券を発行する。鹿野代表は「想像以上の反響があり、サンピアを支えてくれる市民の力はありがたい」と話す。
落札後の設立を前提とした「株式会社伊賀」については、3000万円以上を資本金として、金融機関の融資を得て落札を目指し、協賛金は落札後の施設運営に充てる。
しかし、入札という競争を勝ち抜くには、より多くの資金協力が必要。入札が行われた全国の同様施設の中には、落札後にマンションが建つなど形態が大きく変ったケースもある。そんな中、地元が受け皿会社を組織し、運営や雇用の形態を守ろうという動きは全国でも例がない、という。
同施設の場合、隣接する市最大のホール「市文化会館」との関係は深く、駐車場の共有や来場者の喫食について同施設が果たす役割は大きい。また、文化会館への進入路は同施設の所有地であり、関係者からは第三者が落札した場合の文化会館運営への影響を懸念する声も上がっている。
鹿野顧問は、「これまで地域密着型の経営姿勢を貫き、人もカネも出して市のイベントなどに協力してきた。ぜひとも、このままの姿でサンピアを存続させたい」と意気込む。
同施設に対し、独立行政法人年金・健康保険福祉施設機構が公告した入札による最低売却価格は4億1500万円。来年2月4日まで受け付け、同月19日に入札が行われる。