12月25日16時1分配信 毎日新聞
宮崎市が総額約20億円をかけて国民宿舎と屋内市民プールを建て替える石崎浜荘改築計画。プールの利用者団体が「豪華な設備はいらない」と事業費削減を要望したが、09年7月の着工に向けて市も市議会も押し切る構えだ。
「こんな立派なプールになるの?」
佐土原ママスイミングクラブ代表の田中克子さん(67)は1月、市から基本設計の図面をみせられ、絶句した。温泉浴場とプールを併設した2階建ての巨大施設。25メートルプールの水深を自動的に調整する可動床、1・2階に計約500席の観客席……。近所のお年寄りが泳いだり、障害児と交流したりする現在の庶民的な施設とはかけ離れていた。
バリアフリー化など改築自体に反対でなかった。だが、計画では多額の維持経費が見込まれ「赤字経営にならないか心配だ」と収入見通しなどを尋ねても、市側は「明らかにできない」と回答せず。現在の年会費2万円の利用料金も値上げされるのかどうか、新料金も示されない。田中さんらは9月に計画見直しの陳情書を市と議会に提出した。
市の主張とは。建て替えは06年1月に編入合併した旧佐土原町との協議で合意した。豪華過ぎるとの指摘には、合併前に町が立てた事業費32億円の構想より、市の計画は「簡素化した」と反論する。
だが、旧町民であり、長年プールを愛用してきた利用者の声がなぜ、十分に反映されなかったのか。約20億円は合併特例債で借りる借金で国の支援分を除くと、市の負担は約6億7000万円の見込み。市内全域の市民の税金が使われるのだから、意見も広く聞くべきだ。将来、赤字経営が続けば、さらに負担が増える恐れもある。運営計画などの情報公開は当然の義務である。
着工後、約2年間は現在のプールは使用できない。市は利用者に約20キロ離れた県営プールなどへの移動を求める。平均70代の佐土原ママスイミングクラブの会員の男女約30人も行き先は未定という。建設が確実になった今も「年金暮らしのお年寄りら社会的に弱い立場の人も通える施設になるんでしょうか」。田中さんらの不安は消えない。【中尾祐児】