’08取材帳から:/6 女将らのアイデアで温泉街に活力 /宮城

12月26日13時1分配信 毎日新聞

 ◇「おもてなしの心」忘れずに
 さりげない心配りと温かな「おもてなしの心」で接客を――。
 今年は10月から3カ月間、「美味(うま)し国伊達な旅」をキャッチフレーズにした大型観光キャンペーン「仙台・宮城デスティネーションキャンペーン」(DC)が県内各地で展開された。震災の風評被害をはね返そうという、行政や観光関係者らの取り組みが日々伝えられた。そんな中、山深い一つの温泉の人たちの取り組みに心和む思いがした。
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 蔵王連峰山ろくの標高約330メートルの高原に位置し、開湯400余年の歴史を誇る蔵王町遠刈田温泉。
 その温泉街で、「おもてなしの心」をモットーに活動したのが、遠刈田温泉旅館組合婦人部の女将(おかみ)さんらだ。同部は、部長の佐藤久美子さんらメンバー約20人。何度となく現地取材に訪れ、アイデアあふれる奮闘ぶりが強く印象に残った。
 本番のDCに向けて昨秋からは、遠刈田・青根両温泉地区を巡る無料周遊バス(ループバス)に、「私たちの力で知名度アップを図ろう」と、そろいの法被姿で乗り込み、観光案内のバスガイド役を務めた。
 今年4月には、温泉商店街の空き店舗を活用。遠刈田温泉の歴史や魅力を伝える情報発信地とバス停留所も兼ねたミニ歴史館「遠刈田いまむかし」をオープンさせた。また、地元こけし工人らと協力して、温泉街に共通の大きな「こけし看板」を設置。県北に大きな被害が出た宮城・岩手内陸地震では、風評被害に悩む鳴子温泉の女将らと、観光復興策を図る交流会も開催した。塩釜市商店街関係者との交流会も図るなど「おもてなしの心」のアドバイスは惜しまなかった。
 芸者が減るとともに歌われることが少なくなり、1970年代を境に一時消失していた「遠刈田小唄」の復活にも取り組んだ。彼女たちが再生の歌声を響かせた際には、大きな話題となった。
 仙台・宮城DC推進協議会によると、11月の県南エリアの入り込み客数は、前年同期比で約134%と大きな伸びを見せている。テレビCMに女優の吉永小百合さんを起用するなど宣伝が功を奏した面もあるだろう。それとともに、女将らのアイデアあふれる地道な取り組みが結実した面もあると思う。
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 景気低迷で世相も暗くなりがちだ。ささやかな安らぎを求め、身近な温泉地に足を運んではいかがだろう。
 県内各地の駅長、自治体の商工観光関係課長、女将らを紹介したDCのPRポスター。どの顔もほほ笑み、「宮城のおもてなしの心」を示していた。DCは26日で閉幕する。だが、今後も、心意気は無くさずに伝えていってほしい。【豊田英夫】=つづく

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