1月23日17時5分配信 毎日新聞
◇にぎやかな人情の湯
「お薬師さまが見守る賑(にぎ)やかな社交場」――。別府八湯温泉本のそんな紹介文にひかれて、天満温泉に出かけた。外の寒さですっかり体が冷えていた長女日向子(3)は、お湯を熱く感じたのか、最初は「おうちに帰る」とぐずっていたが、そばにいたおじさんが「こっちがぬるいよ」と笑顔で声をかけてくれると、ようやく落ち着いて肩まで湯につかった。
1959年、地元の人たちが市営給湯の温泉を使って建設した。66年に敷地内を掘削したところ、100度前後の高温の湯が湯けむりと共に噴き出し、「旧市街地で唯一の湯けむりの温泉」と評判を呼んだ。06年2月に湯けむりは常時出なくなったが「それでも時折、噴き上げる時がある」と天満温泉組合会計担当の山内正治さん(73)は話す。
天満温泉のもうひとつの魅力が、浴場のあちこちで飛び交うにぎやかな会話だ。山内さんは「古くから住む人が多いから和気あいあい。ほとんどが顔見知りで、ちょっと顔を見かけないと『体でも悪いんだろうか』と心配するほどです」と紹介してくれた。
浴槽の横で体を洗っていると、壁の向こうの女湯がひときわにぎやかになった。あたりの雰囲気に慣れてきたのか、日向子がニコッと笑いかけてきた。
「何かすごいなぁ。この温泉、人気なんやな」 【祝部幹雄】
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源泉温度約99度のナトリウム塩化物・炭酸水素塩泉。別府駅周辺の市街地には珍しい無色透明の透き通った湯だ。「美人の湯」と言われ、風呂から戻った日向子も「お肌がつるつる」と自慢していた。入浴料100円。営業時間は午前6~11時と午後2時~10時半。