<バンダイ>「お札」入浴剤や「ビールかけ」シャンプー 玩具メーカーの隠れた実力に迫る

2月1日15時35分配信 毎日新聞

 「お札」のような入浴剤や、プロ野球の優勝シーンで見る「ビールかけ」を疑似体験できるシャンプー、通常の入浴剤の6倍の大きさという「ギガ入浴剤」……。これらの商品は意外にも玩具メーカーのバンダイから発売されている。なぜ入浴関連商品を手がけたのか、その開発事情に迫った。【河村成浩】

 ◇入浴剤とフィギュアのコラボ

 バンダイと言えば、「ガンダム」や「たまごっち」などのイメージが強いが、実は20年前から風呂関連の商材を手掛けている。玩具と風呂は一見無関係のようだが、「子供が嫌いな風呂を楽しくする」という視点で、「ウルトラマン」や「プリキュア」など入浴剤の開発、販売を始めた。

 当初はキャラクターに頼ったバス商材だったが、02年に溶けた入浴剤の中からフィギュアが出てくるというアイデアを取り込んだ「びっくら? たまご」シリーズが大人気となった。入浴剤から何が出るか分からないドキドキ感が受けたためで、「アンパンマン」からスタートし、「ポケモン」「ハローキティ」などの子供向け、さらに「カピバラさん」「豆しば」といった女性向けの商品も出している。

 バンダイのライフ事業部で営業チームに所属する細井一彦マネジャーは「ガチャガチャの要素があるのがポイント。それだけでなく、女性ならフローラル系の香りにして、色とにおいをキャラに合わせるのも大事なんです」と明かす。

 ヒットした「びっくら? たまご」の応用というべき存在が、通常の入浴剤の6倍ある「ギガ入浴剤」。風呂に入れるとすごい勢いで泡が出ていて、フィギュアの代わりに魚のプレートが何と16枚も出てくるのだ。一見すると思い付きの商品のようだが、溶ける時間も計算されていて、表面積が大きいため、普通の入浴剤と同じく3~5分でなくなる。開発チームの中島宏次マネジャーは「これ以上大きくすると使いごこちが悪いんですよ」と話す。ちなみに16枚のプレートには、それぞれ魚の名前と英語のスペルが書いてあり、風呂場が勉強の場になったりする。

 ◇大人も購入 ネットの口コミ狙い

 こうしたアイデアを盛り込んだユニークな個別包装の入浴剤のメリットは、他社との差別化ができると同時に商品の単価を上げられることだ。そして当初の子供向けの入浴剤から、大人も楽しめる商品に力を入れるようになった。

 アイスキャンデーの「ガリガリ君」と「うまい棒」をモチーフにした入浴剤は、「大人と子供のどちらにも受ける」という視点で開発された。“とんがった商品”を作ることで、インターネットの口コミを利用しているのがポイントだ。

 「十万円札」の入浴剤、カレー風の入浴剤、「ビールかけ」シャンプーといったアイデアは、開発チームが営業チームとやりとりをしながら企画されており、両者が「面白い」と口をそろえたものがヒットするという。それだけにアイデア出しは苦労するといい、中島さんの場合は、夜と朝の2度風呂に入り、他社製品も試す。さらにドラマやゲームなど、世間で面白いといわれるものは一通り触っているという。ちなみに開発する入浴剤は、法律で基準が定められ、質の高さを求められる「医薬部外品」「化粧品」にするこだわりようだ。

 入浴剤の市場年間規模は352億円で、うち個包タイプが62億円。個包タイプに限れば、バンダイのシェアは16%でトップだという。玩具会社が生み出すユニークな次の商品に期待だ。

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