どうなる建設業界:独禁法違反・排除勧告 近づく審決/下 /岩手

2月2日12時1分配信 毎日新聞

 ◇農業、介護などに活路
 ◇多角経営で存命を--市場縮小で懸命の模索
 九戸村長興寺のビニールハウスで、老舗百貨店、三越(東京都)に出荷する寒締めホウレンソウの収穫が大詰めを迎えている。経営するのは久慈市の建設業、蒲野建設。同社は公共工事の減少を見据えて03年からホウレンソウの生産を始めた。
 98年から熟成堆肥(たいひ)の製造、販売を開始した。それを利用したホウレンソウを栽培。販路開拓のために直接、野菜を持って三越を訪れて売り込み、契約を結んだ。今では県外の生協やスーパーなどにも販売する。同社の堆肥を使い、野菜を作る「協力農家」が20軒あり、同社の野菜とともに販売するなど農家の所得向上にも貢献する。
 蒲野秀雄社長は「建設業の仕事は減るばかり。農業は売り上げ全体の1割だが、まだ伸びる。もっとシフトしたい」と話す。
 さまざまな業種に参入して建設業を上回る利益を出す業者もある。矢巾町の「水本」は、かつてはほとんど公共工事だけを取り扱っていた業者だった。
 しかし、03年から所有する温泉施設や土地を利用し、デイサービスなど介護事業を始めた。ベッドなど介護器具のレンタルや不動産管理、イチゴの栽培、食品のワゴン販売などの事業も展開。建設業の売り上げは最盛期の10分の1まで落ちたが、介護事業などの利益が本業を上回り、支えているという。
 県では06年度から新分野への事業に補助金を設けているが、県建築技術振興課は「参入しても販路の開拓がネックとなっている」と他業種への参入の難しさを指摘する。事業を軌道に乗せる業者は少ない。
 ただ、建設業界は過剰な状態にある。同課によると、公共、民間を含めた県内の建設投資額は96年度に1兆780億円に達したが、07年度には5718億円と半分近くまで落ち込んだ。一方、建設許可業者数は、廃業してもまた参入するといった状態が続き、07年度は4580社とピークの99年度から1割の減少にとどまる。
 ただ、05年度からは減少傾向。今後、不況による工事の減少や指名停止が出た場合、この流れは加速する可能性がある。縮小する市場で生き抜くには、経営の多角化が必要だ。【安田光高】

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