「城の崎にて」舞台無残、志賀直哉ゆかりの桑が雪で折れる

2月4日16時53分配信 読売新聞

 兵庫県豊岡市城崎町の城崎温泉街の上流約2キロにある志賀直哉(1883~1971)ゆかりの桑の木の枝が、今冬の大雪で折れ、無残な姿になっている。5年前の台風で倒れたという幹の一部も横倒しになったまま。志賀の代表作「城の崎にて」に登場した木の2代目で、小説の舞台の一つとして訪れる観光客もいることから、城崎温泉観光協会は「関係機関と協議し、対応を検討したい」としている。

 桑の木は、温泉街から同市竹野町へとつながる県道沿いにある。高さ約4メートルのところで幹から分かれている枝が折れ、地面に垂れ下がった状態で放置されている。1月に20センチ以上の積雪があり、枝に積もった雪の重みで折れたらしい。

 「城の崎にて」は、電車にはねられた志賀が1913年に城崎温泉で養生した体験を基に書いた短編小説。桑の木は「ある一つの葉だけがヒラヒラヒラヒラ、同じリズムで動いている」などと描写された。

 志賀は、温泉街で蜂やネズミ、イモリの死を見つめ、自分の生と重ね合わせた。郊外にも散策に訪れ、静寂の中で1枚の葉だけが動く桑の木を見上げたという。

 小説で描写された温泉街をたどるスポットの一つとして訪れる観光客もいることから、県道には「志賀直哉ゆかりの桑の木」という案内板も設置されている。市城崎総合支所は「桑の木は市の管理ではないが、観光協会などと話し合いたい」としている。

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