寺院で集中、たき火に笑顔 都会のオアシスを満喫

2月11日14時20分配信 産経新聞

 景気の低迷が長引く中、「今は外出や消費を控えた方が…」と考える人は多いだろう。だが、浪費をしなくても、癒やされたり、学べたり、遊んだりできる場所は数多くある。発想を変えて、お出かけ先を開拓すれば、閉塞(へいそく)感から少しは解放され、気持ちに潤いが出るかも。そんな楽しみ方を3回にわたり紹介する。

 キーン、キーン-。

 午前7時。東京・広尾の香林(こうりん)院に、座禅会の始まりを告げる鳴らし物の音が響く。

 参加は無料。予約の必要もない。平日は毎朝7時から休憩を挟んで約50分。真冬でも毎日10人前後が訪れる。

 週1回通う会社員男性は(36)は「転職を決めたので、気持ちをリセットしようと思った」と語る。「集中すると癒やされる」という人も。フリーターや学生もいて年齢は幅広い。

 座禅会が始まったのは7年前。有料で行う所もあるが、ここは無料で続ける。「檀家(だんか)にだけでなく、いかに世間のお役に立つかということも大切」と住職の金嶽宗信(かねたけそうしん)さん。当初は希望者が少なく一対一で行っていた。参加者が増え、2年ほど前から平日は毎日開催。日曜は午後5時からで、毎回30人ほどが訪れる。

 ◆安らぎ、感動

 東京・神谷町の光明(こうみょう)寺には、本堂前の広縁(ひろえん)に約20席のいすとテーブルが置かれている。オープンテラスの趣だ。国道1号の近くにあるものの、本堂周辺は木々が多く、東京タワーも間近に望める。昼食時に弁当を食べる人も数多い。

 週2、3回訪れる近くの会社員男性(46)は「静かで落ち着きます」。まさに、お金をかけなくても安らぎと景観の素晴らしさを満喫できる都会の“オアシス”だ。

 ステレオの音色のすばらしさを実感することができる空間もある。東京・秋葉原のオーディオ店「ダイナミックオーディオ5555」(www.dynamicaudio.com)では、数千万円の高級ステレオの無料試聴を行っている。

 7階にある55畳の試聴室には、えりすぐりのアンプやスピーカーがずらりと並ぶ。組み合わせによっては5000万円相当の音も体感でき、例えばクラシックをかけると、重量感だけでなく細かな旋律も鮮明に響き渡る。

 「体験、感動、販売がコンセプト。体験するために試聴設備を作りました。そして感動してもらってこそ価値が分かる」。川又利明店長は、そう話す。

 ◆だんらんの場

 東京都世田谷区内の4カ所にある「プレーパーク」と呼ばれる子供の遊び場には、たき火ができる場所がある。都内の公園は、条例などでたき火が禁止されているケースが多いが、ここは近隣住民や消防署の理解を得て、特例で認められている。「プレーリーダー」と呼ばれる世話人がいる水~日曜の午前10時~午後6時に利用できる(はねぎプレーパークは月曜も開園)。

 敷地内には、工務店などから提供してもらった廃材が置いてあり、各自で火をたいていく。「あったかい」「煙のにおいが独特」と評判で、子供たちが笑顔を浮かべ、炎を見つめている。親と一緒に、焼きいもを楽しむ子も。

 区役所の永井努児童課長は「あれもだめ、これもだめ、と規制が多い中で、自分たちの発想で遊べる場は大切。子供たちの発達にも役立つのでは」と語る。

 銭湯の無料入浴日を設けている自治体もある。千葉市の計18カ所の銭湯では、毎月26日に市内の65歳以上のお年寄りが、第1、3日曜日は小学生が、それぞれ無料で入浴することができる。特にお年寄りに好評で、当日は開店前から行列ができるところもある。

 市公衆浴場組合の石川忠組合長は「少しでも出費を抑え、なおかつ癒やされたいと思うお年寄りは多いはず。家に引きこもらず、だんらんを楽しむような場にもなれば」と話している。(安田幸弘)

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