2月16日15時11分配信 読売新聞
岩手、福島、和歌山3県の犬猫駅長たちが無名駅を全国区の人気に押し上げている。
ひなびた駅は今や観光名所。経営難に苦しむ第3セクター鉄道やローカル私鉄にとって、久々の明るい話題だ。
制服を着込んだヨークシャーテリアがとことこ駆け寄る。ホームに降りた客たちの顔がほころぶ。「マロン」が昨年6月から名誉駅長を務めるいわて銀河鉄道奥中山高原駅(岩手県一戸町)は、盛岡駅から50分。付近に著名な神社もなく、例年なら静かな正月も、今年は違った。
マロン目当てに連日約50人が下車。大阪や北海道から来る人もいる。マロンの携帯ストラップ1000個は半年で完売、昨年11月出版の写真集も初版8000部が間もなく売り切れる。
会津鉄道芦ノ牧温泉駅(福島県会津若松市)の猫駅長「ばす」は、昨年4月の着任から半年間で、前年同期の1・5倍の2万8000人を集客した。地元テレビ局の天気予報の背景にレギュラー出演して人気沸騰。「ばすには頭が上がりません」と会津鉄道の小柴哲也・総務課長補佐。
ブームの先駆け、和歌山電鉄貴志駅(和歌山県紀の川市)の猫駅長「たま」は就任3年目。昨年秋に始めた募金も約1000万円になり、来月デビュー予定の「たま電車」の改装費に充てる。
第三セクター鉄道等協議会の「輸送実績・経営成績」によると、2007年度に経常黒字となったのは加盟36社のうち北越急行(新潟県)など5社だけ。21社は06年度より輸送人員が減少した。
集客には各社悩むが、この犬猫駅長たちは急造アイドルではない。「マロン」は飼い主の委託駅員本木ヨコさん(65)とともに勤務歴8年。「ばす」は地元児童に拾われて9年前に駅に。どの駅長も3度の食事やおやつ程度の“給与”で不満はないようだ。