苦しみ乗り越え:光星ナインたち/1 小林寛選手(2年)=投手 /青森

2月24日11時1分配信 毎日新聞

 ◇監督の期待に心機一転
 昨夏、甲子園出場をかけた青森山田(青森市)との決勝で、八回からマウンドに上がった。4球目に得意のスライダーを投げた時、右ひじから「ぶちっ」と音が聞こえた気がした。その夜、風呂場でシャンプーをしようとしたら手が上がらなかった。
 病院で右ひじ内側のじん帯損傷と診断され、1キロのダンベルでのリハビリを命じられた。しかし一向に良くならず、やる気はうせていった。他の選手たちがノックしている間、走るふりをして道路で円盤形の赤いバランスボールを枕にして寝ていた。親には電話で「病院に行くから大阪に帰る」とうそをついた。野球をやめるつもりだった。
 9月のある日、金沢成奉監督(42)がグラウンドに集まった選手に、「小林を県大会のベンチに入れる。神宮まで連れていく」と言った。突然のことで戸惑ったが、「監督はそこまで期待してくれているのか」とうれしくなり、それまでの自分を恥じた。
 秋の県大会決勝。青森山田に六回で1点差まで詰め寄られた。八回2死二塁で突然、金沢監督から「投げれないお前の悔しい気持ちにかける」と代打を告げられた。打席に入ると最初は緊張で手が出なかった。だが、金沢監督の怒鳴る姿が目に入った。「期待してくれている。打たなきゃ」。球種も識別できなかったが夢中でバットを振った。これが右越えとなって1人が生還。青森山田を突き放す一撃となり、勝利の立役者になった。
 けがは完治し、今は調子も上がってきた。「甲子園では監督に恩返しをしたい」と気持ちが高鳴っている。
    ◇
 第81回選抜高校野球大会に出場する光星学院。選手たちはどんな困難に遭遇し、いかに乗り越えてきたのか。それぞれの闘いを追う。(この連載は山本佳孝が担当します)=つづく
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 ■人物略歴
 大阪府出身。178センチ、77キロ。右腕。特技はフィールディング。

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