シンポジウム:七尾湾を豊かな「里海」に 「人と自然の共生モデル」探る /石川

2月23日14時1分配信 毎日新聞

 ◇里山の再生も、トキの分散飼育生かせ--「人間の自然化、重要」
 希少種を含め多様な生物が生息する七尾湾を実り豊かな「里海」にする方法を考えるシンポジウムが22日、七尾市の和倉温泉観光会館で開かれた。県、地元自治体、金沢大などでつくる実行委員会主催。学会における里海を取り巻く状況や県内外の里海づくりの事例が報告されたほか、七尾湾が人と自然の共生モデルとして独自例となりうる可能性を議論した。
 「里海」とは、人手を加えることで生物の多様性と高い生産性を持つようになった沿岸海域を示し、人が海の生態系を壊すことなく付き合う持続的なシステムとして近年国際的注目を集めている。
 基調講演で九州大の柳哲雄教授は里海の必要条件として「太くなめらかな物質循環」を挙げ、実現には「沿岸の住民が欲望を抑え、自然のリズムを正確に知る『人間の自然化』が重要」と語った。
 また、奥能登の里山や里海の再生を進める金沢大の中村浩二教授は、過疎高齢化が進む現実を指摘。集落が崩壊しないための活性化案として、分散飼育の受け入れが決まったトキをシンボルにし、トキが野生に復帰できるよう里山を再生しながら、観光資源の開発などに取り組むことを提示、里海でも環境と経済の好循環を生み出す必要があるとした。
 さらに、パネルディスカッションでは、里海づくりが「環境を守りながら水産業や観光業を振興する」という新たな形態の模索であることが示され、漁師や観光業者といった利害関係者で環境を維持するための憲章を作り、カキだけでなく海を浄化する役割を持つナマコの養殖を同時に行うことなどが提案された。【高橋慶浩】

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