3月5日16時2分配信 毎日新聞
◇県債2兆円超比較に、幕末当時の経緯紹介の紙芝居も--「可部カラスの会」
江戸末期から明治初期に広島藩が行っていた偽金鋳造を市民団体「可部カラスの会」(友広大造代表)が8日、安佐北区可部東5の可部高校旧グラウンド近くの広場で再現する。江戸時代の幕末、長州征伐や戊辰戦争に絡む出費に加え、大凶作の年が続くなど、借金地獄に悩んだ広島藩の裏側の歴史を振り返る。紙芝居で県債残高が2兆円を超える現在の広島県をも皮肉りながら、偽金作りの経緯を話し、鋳物業を営んでいた友広代表が、会場に炉を据え、“偽金”作りを復活させる。【井上梢】
当時、可部地区はたたら製鉄など鋳物作りが有名だった。可部の大商人の南原屋当主、木坂文左衛門は広島藩から受けた偽金作りの打診に逆らえなかった。木坂は人目に付かない場所で100人以上の職人を集めた偽金工場を造った。腕利きの職人たちは薄々、偽金作りに加担すると気付きつつも1868年5月から翌年9月まで断続的に作り続けた。記録では31万枚の「天保通宝」を造ったとされる。
その後、木坂文左衛門は当時の捜査機関「弾正台」に出頭するが、広島藩や職人を守り、1人で罪をかぶって厳しい取り調べを受け、釈放後に亡くなった。
その後も鋳物産地の可部地区では、五右衛門風呂やマンホール作りを行ったが、大企業の鉄鋼大量生産が広がるにつれ、鋳物作りは消えていった。
06年ごろから“偽金”作り復活を考えていた友広代表は「可部のイメージを悪くするのではなく、偽金を作らされた職人の苦しい気持ちを知って歴史に思いをはせてほしい」と話した。
会場は、かつて偽金工場があったとされる場所。“偽金”製造は午前10時と午後2時。問い合わせは同会(090・6407・2580)まで。