3月8日6時13分配信 河北新報
山形県庄内地方を舞台に納棺師の物語を描いた「おくりびと」が、米アカデミー賞の外国語映画賞を受賞した好機を逃すまいと、庄内地方のロケ地巡りに観光客を呼び込む動きが熱を帯びている。関係者は「世界に冠たるアカデミー賞にあやかり、庄内の良さを世界に発信したい」と張り切っている。
庄内交通(鶴岡市)は4月から5月にかけ、ロケ地巡りバスツアーを企画。本木雅弘さん扮(ふん)する主人公が再就職する「NK(納棺)エージェント」の社屋として使われた旧日本料理屋「小幡」(酒田市)、納棺シーンが撮影された三川町文化交流館(山形県三川町)、主人公の幼なじみの実家が営む銭湯「鶴乃(の)湯」(鶴岡市)などを回る。
ツアーは日帰りと1泊2日の2種類。日帰りは仙台、山形、鶴岡が発着地となり、仙台発着の場合は8200円。1泊2日コースは2万―2万8000円で、ロケ地以外にも料亭観光施設の相馬楼(酒田市)などを楽しめる。本間道明社長は「観光業が疲弊しがちの今、アカデミー賞受賞は大変に勇気づけられる」と期待している。
メーンロケ地となった酒田市では、観光客を迎え入れる意気込みが違う。酒田観光物産協会は10日から計3回にわたり、地元のホテル、タクシーなど観光客と接する機会が多い会社の社員向けに「おくりびと研修会」を開く。
撮影にまつわるエピソードを共有し、ロケ地巡りに来た観光客からの質問などにきちんと対応するためだという。同協会は既に、全国の旅行代理店向けにロケ地マップを同封したダイレクトメールを送付するなど、誘客に躍起となっている。
北庄内の酒田市、山形県遊佐町、庄内町でつくる「酒田圏域観光物産事業実行委員会」(委員長・阿部寿一酒田市長)は、月光川・朝日橋周辺(遊佐町)とJR余目駅(庄内町)の2カ所に、案内看板を設置することを決めた。
このうち、主人公が鳥海山を背景にチェロを演奏するシーンが撮られた遊佐町では、JR遊佐駅構内の3カ所に受賞記念の垂れ幕が掲げられた。
7月には初めて、庄内空港へのチャーター便で韓国からの鳥海山周辺ツアー客を受け入れることも既に決まっており、ロケ地周辺と合わせてアピールしたい考え。池田薫副町長は「庄内を世界に発信するチャンス。ロケ地と一緒に鳥海山を売りこみたい」と話している。