6月8日17時10分配信 紀伊民報
和歌山県白浜町は、昨年秋から実施設計の作成に入っていた椿温泉公衆浴場(同町椿)について、8月中にも建設工事に着手する。事業費1億4000万円を計上した予算案を、9日開会の町議会6月定例会に提案する。営業開始は来年4月の見込み。施設の維持運営は地元の社団法人「共済組」に委託する予定。立谷誠一町長は「地域の衰退に歯止めをかけ、椿温泉を守りたい」と話している。
椿地区は湯治場として栄えていたが、宿泊客はピーク時(1978年の約13万4000人)の約3分の1に減少、昨年11月には老舗旅館1軒が倒産した。椿地区を通過する格好で高速道路の建設計画も進んでいる。危機感を強めた椿区や椿温泉観光協会、女性団体など地区内の26団体が「椿地区住みよいふるさとづくり研究会」を発足させ、地域振興につながる集客施設の整備を2007年6月に町に要望。研究会も地場産品の直売や特産品の開発、通年のイベントづくりを進めている。
町が、住民と来訪者との交流の中核施設として温泉を生かした公衆浴場の整備を決め、昨年の10月中旬から準備を進めていた。公衆浴場は椿温泉では初めて。
建設場所は温泉街の中心地にある国道42号沿いの空き地で、そばに町営足湯がある。共済組から温泉と土地の無償提供を受け、完成後は指定管理者として共済組に運営を委託する予定という。
計画によると、施設は木造平屋で、延べ床面積は266平方メートル。浴室は男女各26平方メートルで一度に十数人が入れる。家族浴室もある。軽食ができる設備と地域物産の販売所、椿温泉の観光総合案内所も設置する。
温泉が冷泉で加温が必要なため、経費を減らす目的でソーラーシステムや廃熱回収システムも導入する。町は「本年度当初予算で事業費を計上する予定だったが、運営コストをいかに軽減するかの工夫と、浴場以外にどんな機能を持たせるかについての地元との協議に時間をかけた」と説明している。
近くの公衆用トイレも整備し、国土交通省の「道の駅」に登録申請する。
地元からは「日帰り入浴できる施設が椿温泉街や近隣にもあるので、既設の施設にはない特徴ある浴場が求められる」とする声が出ていた。
町は「露天風呂を造るなど浴場としての特徴は場所との関係で残念ながら出せなかったが、地域の総合案内所としてや軽食、地場産品の購入が楽しめる施設としての特徴を生かしたい。温泉街の宿泊施設や進行中のいろんな施策との相乗効果で客を増やしたい」としている。入浴料金などはまだ決めていない。