7月30日17時1分配信 毎日新聞
◇自力で生活、入居費に差
これまでさまざまな介護施設を見てきた。だが、これから紹介する「ケアハウス」は、この連載で登場してきた介護施設とは性格がかなり違う。
高齢者の「終(つい)のすみ家」の一つではあるが、主な入居者はほぼ自力で生活できるお年寄りなのである。
認知症の人たちが家族のような少人数で暮らす「グループホーム」、介護度が最も重い人が入る「特別養護老人ホーム」、それより軽度の人たちが入る「老人保健施設」。これらの「介護施設」では、利用する高齢者たちはしばしば「入所者」と呼ばれる。一方、ケアハウスや有料老人ホームなどの利用者は「入所者」ではなく「入居者」だ。
実は、国はすべての介護施設の利用者を一律に「入居者」と呼ぶよう施設側へ求めているのだが、現場の感覚では「入所」と「入居」との間には相当な隔たりがある。
グループホーム、特別養護老人ホーム、老人保健施設などへ「入所」できるのは、介護保険を使える人だけだ。自宅では自立した生活ができず、介護が不可欠な人たちである。やむにやまれず「入所」に至る人たちだ。
一方、ケアハウスや有料老人ホームの利用者の多くは、自分の意思によって「入居」を希望する人たちである。中でもケアハウスの場合、入居時には介護保険を使わないで暮らせる高齢者を想定する施設が多い。
有料老人ホームの中には、入居時に「要介護」の人でも入れる施設がある。ただし、その場合でも、本人が申請してヘルパーを入居先へ呼んだり、デイケアに出かけたりする。介護保険の利用は、本人と保険側との契約だ。施設側も極力入居者の相談に乗り、介護保険を利用するための協力はする。だが施設側はあくまでも第三者であり、住居の提供者という立場なのである。
ではケアハウスと有料老人ホームは、どう違うのか。簡単に言えばケアハウスは社会福祉法人が運営するのに対し、有料老人ホームの多くは民間経営である点が違う。
税金が投入された社会福祉法人が運営するケアハウスは、営業が第一の目的ではない。このため低所得者が入居できるように入居費を安く抑えることをはじめ、サービス過剰を抑えるさまざまな規制がある。入居者の所得によって入居費も変わる。その点では、県営や市営のアパートに近い性格かもしれない。
一方、民間経営の有料老人ホームは、純粋なビジネスである。利用者の需要があれば、いくらでも高価で豪華なサービスが提供できる。極端な話、玄関にシャンデリアを付けたり、風呂を大理石で飾ることもできる。有料老人ホームは高齢者向け豪華マンション、あるいは豪華ホテルといったイメージだろうか。
本編では、まずケアハウスを訪ねてみよう。【大島透】