お産に関する日中風習の違い~中国人女性を妻に持つ男性泣かせ?

9月18日14時16分配信 サーチナ

MAO的コラム 中国語から考える 第88回-相原茂

 ハオ中国語アカデミーという語学の専門学校で「相原塾」というかなり個人的な授業をしている。月に1回だけ、私が1コマ授業をする。それについての補足というか実践面でのフォローを翌週中国人講師が担当する。私はどちらかというと理論的な面を、担当中国人講師はそれを実践に応用した授業をする。まあ理論と実践の結合というわけだ。これを6ヶ月続けて1期とする。

 ペアを組んでいる講師は上海出身のNさんという女性で、とても聡明で頭の回転も速い。授業をしていると、私はおかしなことを不意にネイティブに質問したりする。彼女はそれに即座に答えなければならない。何しろ日本人はネイティブの先生というのは何でも知っていると思い込んでいる。彼女はニコニコしながらたいていの質問にそつなく答えている。

 その彼女が結婚し、お産を控え、いよいよ産休に入ることになった。もうおなかが目立ちはじめた。

 いつの予定かと聞いたら、年明けになりそうだという。

 彼女は申年うまれ。今年中に生まれれば子供は丑年だから、サルとウシで相性がいい。何とか今年中に生まれてほしいと真剣な顔をして言う。今年中といっても、春節までに生まれればいい。つまり旧暦で考えている。来年2010年の春節は2月14日だから、その前であればよいということになる。年を越すと次の干支は寅だ。サルとトラでは相性が悪い。なんとか今年中に産みたい。

 もし、それまでに生まれなかったら帝王切開してでも産むという。きっぱりともう覚悟を決めているような口吻だ。そこまで生まれ年の相性にこだわるのかとびっくりした。

 今の話も、私が十二支の話題を仕向けたわけではない。彼女が自分からすすんで話し出したのだ。知的で迷信などとは縁遠い上海出身の若い彼女ゆえ、なおさら意外だった。中国では、恋人や結婚相手を決めるとき、また子供を産むとき、十二支での相性を気にすることがわかる。

 さて、子供が生まれたら中国には“坐月子”という習慣がある。これは出産後1ヶ月、妊婦は体力を回復させ、かつ病気にかからないために、次のようなきまりを守るのである。

一.髪を洗ったり、シャワーを浴びてはいけない。
二.野菜や果物、アイスクリームなど冷たいものを食べてはいけない。
三.窓を開けて外の空気に当たってはいけない。
四.ベッドから下りて運動をしてはいけない。
五.家事をしてはならない。
六.十分に栄養のある魚や鶏のスープなどをとること。

 家事をしなくてもよいとか、栄養のあるものを食べなさいというのは良いだろうが、髪を洗ってはいけないとか、入浴もいけない、外の風に当たってはいけないなど、あまりに現代の健康観念からかけ離れている。

 今時の都会の若い人はこんなことを守らないだろうが、田舎であったり、親が古い考えだと意見の衝突が起こるという。実際、風呂にも入らず髪も洗わぬ女房に1か月も家の中に居られたらうっとうしくてかなわないだろう。日本で中国人の女性と結婚して、こんな六箇条を遵守された日には目も当てられない。

 だが、大変なことはこの後に控えている。子どもが生まれたら、中国から待ってましたとばかり母親が来日する。いや、生まれる前に来るかもしれない。いったん、来日すれば1ヶ月以上は滞在するだろう。居心地がよいと、半年ぐらい帰らないかもしれない。いや、そのまま居座ってしまうかもしれない。

 お嫁さんは“坐月子”で何もできないから母親が来るのだ。買い物も料理も母親がやる。近所のスーパーに買い物にゆく。日本語が話せるはずもないから誰かがつきそう。当然オムコさんということになる。お嫁さんはいいが、旦那さんには負担増だ。大変なストレスになる。家事をやりつけてない旦那だと、「とんでもない婿殿だ」と母親の攻撃の的になる。バトルがはじまるが、説明しようにも話が通じない。おかしくなる人がいるそうだ。たいてい最後はオムコさんはホテルに泊まり帰ってこなくなるという。

 だから、お産をしても中国から母親は絶対呼ばない、こう決めている中国人女性も増えている。周りの悲劇から学んだのだ。風習の国際化はむずかしい。(執筆者:相原茂 編集担当:水野陽子)

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