9月24日9時59分配信 京都新聞
狭い風呂とベッド、そしてただ寝るだけ-。こうした印象が強いビジネスホテルが変ぼうしようとしている。露天風呂やこだわりの高級寝具など、特色あるサービスを提供し始めたのだ。背景には、不況で減った出張者を引き付けるとともに、新たに観光客を取り込みたいとの思惑がある。
ビジネスホテルチェーンの「ドーミーイン」で人気なのは、全国36のホテルのうち34店に設けた大浴場だ。東京八丁堀店などには露天風呂も設置。運営する共立メンテナンスの山田滋取締役は「足を伸ばして風呂につかれると好評で、風呂目当てのリピーターが非常に増えた」と話す。
昨年12月にオープンした「スーパーホテル京都・四条河原町」(京都市中京区)も館内に天然温泉の大浴場「御所の湯」を設けた。大津市内の温泉から毎日湯を運んでおり、広めのベッドとともに宿泊客に快適さを売り込んでいる。
阪急阪神第一ホテルグループが2007年に開業した「レム日比谷」は、癒やしと眠りが売りだ。すべての客室を素足で歩けるフローリングにし、マッサージチェアと高級ベッドを設置。リラックス効果があるというレインシャワーも付けた。
稼働率は初年度が72・8%、08年度が80・4%と不況でも上昇。担当者は「ホテルの目的を明確にしたことで常連客が増えた」と話す。昨年、秋葉原に2店目を開業、今後もこうしたタイプのホテルを増やす方針だ。
このほか、朝食の品数を増やしたり、高さや硬さの合った枕を選べるようにしたりとホテル各社は工夫を凝らしている。
金融危機以降、業績が悪化した企業は出張回数を減らし、ビジネス需要が低迷した。地方には、工場の閉鎖や縮小で宿泊者が激減したホテルもある。このため各社はあの手この手のサービスで、ビジネス客の取り合いに必死だ。一方、一部地域では低価格競争が激化。東京駅周辺には1泊3千円台の格安プランも登場している。
ホテル側が新たな顧客にと腐心しているのが、需要が堅調な国内観光客だ。「ドーミーイン」は一部ホテルで、ペット同室の部屋やシニア層向けの和室を設け、「土日はなかなか空きが出ない」(山田取締役)繁盛ぶり。「レム日比谷」は女性専用階を設け、近くにある東京宝塚劇場の観劇客の勧誘に成功した。
業界では、備品の合理化などコスト削減への取り組みも徹底的に行われている。「スーパーホテル」では、備品の歯ブラシ不要の客や、食事にはしを持参した客にお菓子を贈っている。「経費削減だけでなく省エネ、エコというイメージアップにもつながる」(担当者)と言う。(一部共同通信)