上海の若者の「住まい」に対する意識

上海から来ている20代後半から30代半ばの男女4人と食事をすることになり、中華料理を食べながら、暮らしと住まいについて話は大いに盛り上がった。

 まず、上海の女性の強いことにびっくり。自分の意見をしっかり持っており、男性に何と言われようと絶対曲げないぞという強い意志が感じられた。

 上海の住まいは西洋風で、玄関に上がり框(かまち)はなく、トイレとバスは同一空間(ホテルスタイル)。「トイレは洗面・浴室と別の方が便利じゃない?」と聞いても「一緒が絶対良い。お風呂に入るときにトイレが同じ空間にあったほうが便利」と言い張る。「トイレとバスが別」を売りにしている日本の賃貸マンションとは好対照である。

 また、対面キッチン、アイランドキッチンも考えられないと言う。キッチンは絶対に独立型でなくてはならないそうだ。これは、毎食油をたくさん使う中華料理を食べたい彼らの食習慣から理解できる。他の部屋にも油煙が飛ぶのを嫌うのだろう。

 日本と大きく違うのは「子供室は北向きでもよいが、主寝室は絶対南向きではなくてはだめだ」という点。「これは昔からの習慣だし、主寝室が南に向いていないと、その家は繁栄しない」のだそうだ。非常に進歩的な反面、住宅を購入するという人生最大の買い物をする際には、昔からの言い伝えを重視するようだ。

 彼らは「家の中に一人の皇帝がいる」と言われた典型的な一人っ子政策世代。両親とそれぞれの祖父母に甘やかされて育っている。おまけに高度経済成長期に育ってきているので、右も左も蹴散らす勢いがありながら、暮らしに根付いた伝統・習慣は変えようとしていない。

 4人とも結婚していないので、将来結婚したら生活と子育てはどうしたいのか聞いてみた。女性2人も、もちろん結婚しても子どもが生まれても仕事は続けると言い、家事は夫婦分担制にし、子どもは祖父母に見てもらうつもりだそうだ。そのためには親の近くに住むのが希望という。

 3世代同居をしている家族も多いらしいが、その理由は、年老いてゆく親の面倒を見るためというよりは、子どもを見てもらう(育ててもらう)ためというのが親と同居する真の理由のようだ。

 「平日は朝から子どもを預かってもらい、私たちも親の家で夕飯を食べさせてもらえればベスト。そのために親の家に近いところにマンションを買いたい」という。

 「これからの暮らしで興味を持っていることは?」と聞いてみたら、「自分の生活レベルをどこまで持っていけるか」「子どもの教育を含めた投資」という答えが返ってきた

子どもの教育をはっきりと投資と位置づけていることに少々びっくりしたが、経済に対する意欲の高さにも圧倒された。

 「日本の住まいでいいなと思うところは?」という質問には、「収納がよく考えられている。特に玄関から廊下にそって壁一面に収納があるのを見たときには感動した。キッチンや洗面室など、あるべきところにしっかりと収納があるのは羨ましい」。という答えが異口同音に返ってきた。

 経済的に豊かになるにつれ、モノが増えていくのは避けがたい真実であるから、これから上海のマンションでも収納の量と質が売れ行きを左右するポイントの一つになっていくのだろう。

 暮らしはその地域の気候風土、歴史的背景、文化によって違い、暮らし方の違いが住まいの在りようも変えるということを再認識した食事会であった。

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