地域振興の低迷懸念 「ウェルサンピア伊賀」売り渡し RFOが入札を公告

11月15日8時0分配信 産経新聞

 伊賀市西明寺の保養施設「ウェルサンピア伊賀」について、独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)が14日、施設を入札方式で第三者に売り渡すことを公告した。全国的に同様の施設を整理しているRFOの方針に基づいた措置。しかし、年間30万人以上が利用し、地域に密着した黒字経営の施設だけに、関係者は危機感を募らせている。存続運動を展開した団体からは「経営を引き継ぐ受け皿組織をつくりたい」という声も出始めている。

 ウェルサンピア伊賀の存廃問題は、平成16年3月の与党年金制度改革協議会での「年金福祉施設等の見直し」によって表面化。5年以内の廃止あるいは売却が決まったため、17年6月には市自治会連合会や上野商工会議所などによる「存続させる会」が発足。「伊賀にとってなくてはならない施設。公的位置づけを持った拠点施設として存続を」と、わずか20日間で6万人を超す署名を集め、厚生労働大臣に提出した経緯がある。

 RFOが14日公告した内容は、最低売却価格を4億1500万円に設定し、入札によって不動産を売却するもの。来年2月19日に入札を実施する。公告によって今後、さまざまな業界から入札希望者が出ることも予想される。落札が決まれば、4月末で現在の運営を停止する。

 これに対して、ウェルサンピア伊賀の井本治見センター長らは、売却により職を失う可能性が出た約80人の職員の対応に追われるとともに、「入札結果を待つしかないが、不安は大きい。地域密着の経営姿勢を貫いたが、民間譲渡されれば、そうもいかないだろう」と表情を曇らせる。

 同市の今岡睦之市長は、市として入札に直接関与する意向はないながらも、「どう関われるか議会とも相談したい。(購入・経営の)受け皿となる組織ができれば、協力したい」と語った。また、存続させる会の今高一三会長は「受け皿組織を作って入札に参加できるようにしたい。市民のカンパも考えたい」と、前向きに検討するとしている。

 ウェルサンピア伊賀は、厚生年金保養施設として平成4年に開館。鉄筋4階建ての宿泊施設や大小会議室、プールやテニス場などを完備。11年には温泉もオープンした。観光イベントなども展開して地域振興に貢献し、年間2000万円前後の黒字を出している。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA